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フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

戦争によって汚染されてしまった地球にて、人間は細々と生きながらえており、一方で火星への移住が進められていた。火星での作業用アンドロイドは外見は人間と区別がつかない精巧さだが、そのアンドロイドの数体が地球に逃亡。アンドロイドを仕留める賞金稼ぎの腕利きリック・デッカードは、疑いのかかる者に人間とアンドロイドを識別するテストを行うなどして、アンドロイドと判明した相手を処理していく。

「人間とは」をテーマとした、近未来SF小説だ。主人公デッカードは、精神不安定な妻など、何人かの人間には人間らしさを感じない。その一方、賞金を稼ぐ仕事のためにアンドロイドに接するうち、彼らの方が人間らしくあらんとしていることを感じる。

この世界では生身の生物が希少かつ貴重で、虫一匹といえども法で管理されている。そして、虫や動物などを人工的に作り出し、人間が飼うのが日常ともなっている。人工物ではない、生きた生物を飼うことが一種のステータス、あこがれの的になっている。

原作者は、。本作は映画『ブレードランナー』として公開されたが、ディックは映画公開の3か月前に死去。映画は、テーマや舞台設定こそ原作に沿ってはいるものの、ストーリーはデッカードとアンドロイドとの対峙がメインになっている。監督のは、アンドロイドの呼称が平凡すぎるとしてレプリカントという造語に置き換え、デッカードの職業呼称も賞金稼ぎ(バウンディ・ハンター)から「」としている。

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』では、「マーサー教」という宗教が結構重要な要素になっていて、終盤ではデッカードがマーサー教と一体になるという描写がある。マーサー教については、読んでもよくわからなかったのだが、なんとこの宗教について描かれた短編があるそうだ。つまりは、『アンドロイド~』の序章的な内容になっていると思われる。

原作と映像作品との関係は、結構難しい。まんま映像化しても凡庸になってしまい、あるいは、活字や絵では許容できるが、実写にすると違和感が出てしまうことも少なくない。『ブレードランナー』と『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』は、それぞれが傑作という、極めて稀な、そして幸福なケースだと思っている。

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