ブレードランナー(1982年)
2019年のロサンゼルス。地球の環境汚染から人類は宇宙に移住するようになり、宇宙開拓にはレプリカントという人造人間を従事させていた。あるとき数人のレプリカントが脱走し、密かに地球に帰還。リック・デッカードは退職していたロス市警の元上司ブライアントに呼び出され、ブレードランナーに復帰。レプリカントたちを見つけ出し、処分する任務を遂行する。
デッカードは逃亡したレプリカントを開発したタイレル博士に会い、博士の秘書レイチェルとも知り合う。デッカードは彼女もレプリカントだと見抜くが、レイチェルは自分が人間だと思い込んでいた。彼女の容姿や記憶などは、タイレルの姪がオリジナルだった。戸惑うレイチェルに、デッカードは特別な感情を抱くようになる。
デッカードをハリソン・フォード、レイチェルをショーン・ヤング、レプリカントはリーダーのロイ・バッティにルトガー・ハウアー、プリスにダリル・ハンナなど。監督はリドリー・スコットだ。スコットは『エイリアン』とこの作品で、映画監督としてのステータスをゆるぎないものとした。ハン・ソロやインディ・ジョーンズなどのキャラクターを演じているハリソン・フォードにとっては、デッカードは決して突出した役柄ではないが、当時はともかく、現在はこの役を演じたことを光栄に感じているようだ。
原作はフィリップ・k・ディックで、残念ながら劇場公開前に亡くなってしまう。今でこそSF作家としてのステータスは絶大だが、生前は経済的に苦しかったとのこと。『トータル・リコール』『マイノリティ・リポート』『アジャストメント』など、映画化された作品は少なくないが、『ブレードランナー』はその最初だった。個人的にもこの映画で知った作家で、以降この人の小説やこの人の作品を原作とする映画を追いかけている。
今や傑作SFカルト映画の筆頭格だが、1982年公開時は商業的に惨敗したそうだ。個人的には、数年おきにテレビやビデオなどで観続けてきた作品だが、最も好きな映画のひとつだと言い切れる。
この映画を傑作たらしめているのは何か。暗い未来の提示、退廃的な雰囲気、決して超人的に強いわけでもない主人公デッカード、人造人間でありながら人間らしくあろうとするレプリカントたち、デッカードとレイチェルの切ないラヴストーリー、など、挙げたらきりがない。これらの要素どれかひとつだけが突出することなく、いずれもが高いレベルで融合しているのが傑作の理由だと思っている。
退廃的な世界観は、その後どれだけの作品に伝播したことだろう。『未来世紀ブラジル』も、『攻殻機動隊』も、『マトリックス』も、『AKIRA』も、『装甲騎兵ボトムズ(特にウド編)』も、それぞれ単体で傑出した作品だが、これらはみな『ブレードランナー』の影響下にあると言っていい作品たちだ。
人間が作り出した機械が自我を持ち人間に反旗を翻すプロットは、『ターミネーター』を筆頭に数多くある。アンドロイドやクローンが、自分が人間と思い込み人間らしくあらんとするプロットも、『月に囚われた男』『オブリビオン』などに見られる。そして『ブレードランナー』は、双方の要素を備えていて、かつ最初の作品と言えるのだ。
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