コーネリアス(Cornelius)@横浜ベイホール 2017年10月28日
個人的に、今年だけで3度目のコーネリアスのライヴになる。しかし、フジロックのときはオザケンを観るために前半のみに留め、ベックのオープニングアクトは40分のコンパクトなセットだった。今回の単独公演こそが、今のコーネリアスの世界観にどっぷり浸れる機会になるはずだ。
ステージは幕で覆われ、BGMをバックに太陽のコロナを思わせるモノトーンの映像が流れていた。それが定刻になる頃にはドラムのビートやギターのリフになり、幕越しにメンバーがウォーミングアップをはじめている。そして5分ほど過ぎたときに幕にメッセージが現れると、ストンと落ちた。『いつか/どこか』でスタートだ。
この5日前に武道館でベックのオープニングアクトとして観たばかりで、前半はほぼそのときと同じように進行。新譜『Mellow Waves』よりも、『Sensuous』『Point』からの曲を中心に演奏している。もちろん、ステージのバックドロップには曲にリンクした映像が流れている。
毎回、演奏が終わる毎に音がぴたっと止むが、その時間はほんの数秒で、場内の空気は間延びしない。その短い間に各メンバーは楽器を交換したり水分補給をしたりする。MCはなく、ただただ演奏に徹するのみだ。VJは、PAブースに陣取るスタッフが担っているだろうか。
横浜ベイホールは、彼らの力量を考えればかなり狭い会場だ。ので、これがメリットもデメリットも生んでいる。まずデメリットだが、バックドロップの映像が、あまり効果を発揮していない。ステージに4人と機材が密集し、その奥に流されていて、生演奏とのシンクロ感が今ひとつなのだ(武道館でのシンクロ感はハンパなかった)。メリットは、とにかくステージが近い。各メンバーの動きが、たとえ前方に詰めていいなくともよく見える。
そしてベイホールには、悪名高き柱が4本立っている。観る位置によっては、ステージの一部が遮られてしまうのだ。この日、整理番号が決して早い方ではなかったワタシは、前方も正面も諦め、向かって右の中盤に陣取った。角度的に大野由美子が柱の影になる可能性があるが、そこは腹をくくった。しかし、ステージセッティングは右寄りになっていて、なんとフロントマンの小山田圭吾が柱でまるっきり見えないという事態に。
最初はうわっと思ったが、気持ちを切り替えた。というのは、見えないがゆえに小山田が何をやっているのかがより伝わってくることに気づいたからだ。堀江博久はギター/キーボードだが、ギターソロは完全に小山田の独壇場で、堀江はリズムギターに徹していた。2人は、まるでオアシスのノエルとゲムのような関係性だ。ymo人脈やmetafiveなどでも観ているが、そこではいちギタリストに徹してつつ淡々と弾いている印象だった。さすがに、自分のバンドではやりたい放題か。
というわけで、ドラムのあらきゆうこがほぼ正面、堀江が向かって左、大野由美子が向かって右端というポジションに。大野は曲によりベースも弾いていたが、卓上で何かを操っていることのほうが多かった(後にモーグ・シンセサイザーと知った)。コーラスもこなしていて、サポートという位置付けではなく、現時点でのバンドメンバーの一員のように見えた。堀江はギターよりもキーボードの方がメインで、他にもいくつか細かい楽器を使っていた。
あらきゆうこのドラムがとてつもなくすさまじいと思った人は、少なくないはずだ。ほとんどのバンドなら後方に陣取っているドラマーだが、ここでは彼女の一挙手一投足が手に取るようにわかり、その刻むビートの的確さと激しさに、度肝を抜かれた。小柄で力があるようにはとても見えないのに、溢れんばかりのエネルギーは、いったいどこから湧いてくるのだろう。前回ツアーでは全員が使っていたツリーチャイム、今回使っていたのはあらきだけのように見えた。
中盤で、ついに新譜『Mellow Waves』ワールドが繰り広げられる。穏やかで淡々とした曲調は、美しくそしてちょっと切ない。歌詞は、コーネリアスにしては日本語でメッセージ性を帯びている。映像はモノトーンで統一されていて、そういえばジャケットもモノトーン、開演前の映像もモノトーン、メンバーの衣装もモノトーンだ。前作『Sensuous』がカラフルなカラーリングのイメージだったので、今回はこういうことなのかな。
終盤は『Gum』でギアが入り、そしてコーネリアス最大のキラーチューン『Star Fruits Surf Rider』へ。終盤は堀江がトランペットを吹き(ちょっとトチってたけど/笑)、小山田がテルミンを操り(この手は見えた)、フロア上部のミラーボールが閃光しながらゆっくり回った。本編ラストは、新譜のリードトラック『あなたがいるから』だった。
アンコールで、小山田がMC。メンバー紹介をし、された側はコーネリアス在籍年数を答える。あらきは19年、堀江は23年くらい、大野は去年の海外のFANTASMAツアーからだそうだ。バッファローとコーネリアスはデビューがほぼ同じだとも。横浜でのライヴがいつ以来かは、覚えてないとのこと。ただ、リハーサルやゲネプロなどで横浜に来ることはあるそうだ。
聴き覚えがあると思った曲は、実はバッファロー・ドーターの『Auto Bacs』で、そして『E』へ。後半、小山田が言い放ったナンバーの数だけバンドがビートを合わせるのだが、終盤になると小山田がマイクスタンドをフロアに向ける。オーディエンスへの合図だ。何人かの声は届いたようで、中には「Eight!」「Eleven!」という声にも答えてやっていた。これがだれずに成立するのは、ライヴハウスならではだ。
セットリスト
“Mellow Waves” Intro
いつか/どこか
Helix/Spiral
Drop
Point of View Point
Count Five or Six
I Hate Hate
Wataridori
The Spell of a Vanishing Loveliness
Tone Twilight Zone
Smoke
未来の人へ
Surfing on Mind Wave Pt 2
夢の中で
Beep It
Fit Song
Gum
Star Fruits Surf Rider
あなたがいるから
アンコール:
Breezin'
Chapter 8: Seashore and Horizon
Auto Bacs – E
アルバムリリースは実に11年ぶりで、ツアーも恐らく9年ぶりくらいになると思う。『Point』でも『Sensuous』でも、国内のみならず海外ツアーもおこない、海外のフェスにも積極的に参戦している。となれば、今年は国内ツアーで、来年はまた海外に繰り出すのではないだろうか。ベックとの関係性をはじめ、海外での人脈構築と音楽性の浸透を進めてきたバンドだし、今海外に進出できる日本のバンドは数少ないと思うので、日本だけにとどまらず世界に向けて音を鳴らしてほしい。
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