エイリアン・コヴェナント(かなりネタバレあり)
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最終更新日:2024/10/15
エイリアン キャサリン・ウォーターストン, シガニー・ウィーバー, ノオミ・ラパス, マイケル・ファスペンダー, リドリー・スコット
西暦2104年。宇宙船コヴェナント号は2000人の移民者を収容し、惑星オリエガ6に向けて航行。乗組員は冷凍睡眠し、船はアンドロイドのウォルターが管理していた。しかし、航行の途中で女性の歌声と思われる信号をキャッチ。船長は機材故障で事故死していて、後を継いで船長になったオラムはその星の探査を決断(事故死した船長のパートナーだったダニエルズは、反対していた)。その惑星は水も空気もあり植物がしげってはいるが、動物が確認できなかった。
やがて、微量の胞子に感染した2人の隊員に異変が発生。白い異生物が2人の体内を突き破り、他の隊員たちにも襲いかかろうとする。そこへ、ローブをまとった男が現れて照明弾を放ち、異生物は退散。男は、10年前のプロメテウス号の探査から消息を絶っていた、アンドロイドのデヴィッドだった。
デヴィッドは一行を自身の住処に案内し、10年の間に起こったことを話す。エンジニアの母星を目指してこの星にたどり着き、行動を共にしていたエリザベス・ショウ博士は着陸する際に事故死したとのこと。そしてデヴィッドは、同じアンドロイドのウォルターを自室に招き、自身の心情と取り組んできたことを話す。しかし、この住処にも異生物が忍び寄っていた。
エイリアンシリーズの前日譚にして、2012年に公開された『プロメテウス』の続編にあたる。当初追い求めていた、巨人生物エンジニアが人類の起源だったのかという回答は、前作で判明したDNAが人間と同じというところから進展していない。ただ今回、黒い液体を浴びたことでこの星のエンジニアたちは死滅している。
監督は、エイリアン1作目と『プロメテウス』に続き、リドリー・スコット。ダニエルズを、『ファンタスティック・ビースト』などのキャサリン・ウォーターストン。アンドロイドのデヴィッドは、前作に引き続きマイケル・ファスペンダー。デヴィッドと容姿が同じウォルターも、マイケルが2役で演じている。
表向きの主人公は、ダニエルズだ。冷静な判断と大胆な行動力でエイリアンに立ち向かうさまは、前作のノオミ・ラパスやエイリアンシリーズのシガニー・ウィーバーの流れを継承している。探査船の船上でエイリアンと格闘し、大気圏外に構えていたコヴェナント号に戻ってからも、隊員に寄生していたエイリアンを重機ごと宇宙に押し出そうとし、よくも悪くもエイリアンシリーズのリプレイを見ているかのようだった。
しかし、実質的な主人公はデヴィッドだ。今作の冒頭は、実はプロメテウス計画よりも以前、ピーター・ウェイランドによってデヴィッドが誕生した瞬間から始まる。デヴィッドはミケランジェロのダビデ像を見て、自らをその英語読みのデヴィッドと名乗る。ダビデは、古代イスラエルの王だった。また、ウォルターとのやりとりの中、オジマンディアス(古代エジプト王ラムセス二世)を題材にしたバイロンの詩を口ずさむ。
エイリアンシリーズ4作は、SFアクションホラーとでも言えばいいだろうか、いちおう娯楽性を出している。対して『プロメテウス』『コヴェナント』では、生命を作り出す創造主は何者なのかという、シリアスなテーマが根底にある。デヴィッドを作ったピーターは、その最後は『プロメテウス』であっけなくエンジニアに殺された。デヴィッドは、年もとらず黒い液体に感染もしない自分こそが王(ダビデ王/ラムセス二世)であり、次なる創造主となることで人間を超えようという野心を抱いている。
エンジニアたちは事故で黒い液体を浴びて死滅したのではなく、デヴィッドが意図的に撒き散らしていた。その後デヴィッドは黒い液体と他の生物との異種配合を重ね、動物を母胎としたときに新生物が誕生する可能性を見出していた。ショウが事故死したというのは嘘で、母胎の実験台にさせられていた。デヴィッドは10年をそうして過ごし、コヴェナント号から探査でやってきた隊員たちは、実験を完成させる格好の材料だった。
しかしウォルターはデヴィッドの理想には共鳴せず、隊員たちを守るべくデヴィッドと格闘する。より人間に近い心を持ったデヴィッドは、言わば「誤動作」を起こして暴走している。後継アンドロイドとして作られたウォルターは、その点が修正され、人間をサポートすることを使命としている。オジマンディアスの詩を詠んだのは、バイロンではなくシェリーだと、ウォルターは訂正。ウォルターは正確で、デヴィッドはやはりどこかおかしい。
前作のタイトル『プロメテウス』は、ギリシャ神話で人間に火(知恵の象徴)を与える神の名で、やがて神から追放される。今作のタイトル『コヴェナント』は「誓約」の意で、神と人間が交わす契約だそうだ。『プロメテウス』は、火を得た人間が創造主である神を脅かさんとする力を持つことを暗示し、『コヴェナント』は創造主と新たに生み出された生物とのつながりを暗示している。
実は、劇中では説明らしい説明はない。なので、なぜ『プロメテウス』か、なぜ『コヴェナント』か、なぜデヴィッドはオジマンディアスの詩を詠んだのか、などなどは、宗教や古い文学に明るい人であれば観てすぐピンと来ると思うが、ワタシは作品を観た後にネットで調べて補完している。デヴィッドとウォルターの対決を、カインとアベルの兄弟喧嘩になぞらえる見方もあるらしい。また、シェリーの奥さんメアリーは、『フランケンシュタイン』つまり人間が怪物を創造した物語の作者とのこと。この作品の原題は、『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』と言うそうだ。
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