シガー・ロス(Sigur Ros)@東京国際フォーラム ホールA 2017年7月31日
フジロックフェスティバルの翌日に東京公演という、フジに参加した身からすればハードな日程だが、シガー・ロスとなれば行かないわけにはいかない。・・・と思い会場へ。19時30分開演は通常の平日公演より遅めのスタートだが、それでも場内は結構空席があった。ちょっと残念。また、開演前のアナウンスで、途中休憩をはさむ2部構成になるとのこと。
開演予定を数分過ぎたところで客電が落ち、真っ暗なステージに人影が。去年のフジロックと同様、ヨンシー、ゲオルグ、オーリーの3人のみの編成だ。全員黒の衣装で、3人の後方には網の目のような横長の鉄骨が設置されており、これが映像を映すスクリーンにもなっていた。曲により、赤やグリーンのきれいな電飾が散りばめられたり、蛍を思わせる点状の光が無数に現れ、ゆっくりと浮遊していた。
向かって右に、ドラムのオーリー。客席には半身の状態で陣取りビートを刻んでいて、曲によっては客側を向いてキーボードを弾いていた。センターがギター&ヴォーカルのヨンシーだ。そういえば、ヨンシーの唯一無二のヴォーカルには毎回心を洗われる思いだが、この人のギターは実はじっくり見たことがないと思い、注目。今やボウイング奏法の代表格で、この日もほとんどの曲で弓でギターを弾いていたが、それ以上に細かい手や指の動きをすることはほとんどなかった。向かって左がゲオルグだが、この人のベースの方が指の動きが緻密だった。ゲオルグは、ヨンシーよりも少し背が高い。
第1部は比較的静かで長尺の曲が中心、つまり聴かせるモードだ。目をつぶって聴いていても心地いいが、あまりに心地よすぎて眠ってしまいそうになり、やはり目を開ける(笑)。すると目の前に広がるのが、鉄骨に流れるアブストラクトな映像で、それがライヴの生音との高いシンクロ率を誇っていた。こうして2部構成の前半はちょうど1時間で終了した。もっとコンパクトに収めるかと思いきや、若手バンドならこれだけでライヴが完成してしまいそうな密度の濃さだった。
約20分の休憩を経て、第2部へ。3人は鉄骨の向こう側に陣取っていて、キーボードやシンセドラムなどを駆使しつつそこで1曲演奏。その後鉄骨がせり上がり、3人は前にゆっくりと歩いて第1部と同じそれぞれの持ち場についた。第1部を「静」とすれば、第2部は「動」だ。バンドのイメージはどちらかというと「静」の方が強いと思うのだが、躍動感のある「動」のモードもできるよ、というのを示しているようだった。
オーリーは、終盤になるとシャツを脱いで上半身裸になった。ヨンシーは、よく見ると歌いながら時折笑っていた。シガー・ロスのメンバーに対して勝手に神秘的なイメージを持っていたが、彼らも生身の人間だなと思ってしまった。
曲が進むに連れて、プレイは更にエモーショナルになり、まるで別世界へと誘って行くようだった。かつてのシガー・ロスは、コーラス隊など大人数のサポートを動員して、圧倒的なライヴをおこなっていた。しかし、現在の3人という最少編成でも、表現力といい音圧といい、以前の彼らに見劣りするどころか、同等かそれ以上と思わせてくれる。同じところに留まっていない、彼らが進化していく過程に、ワタシたちは立ち会っているのだ。
第2部も、第1部と同等の約1時間を費やして彼らは演奏した。すべての演奏が終わった瞬間は、まさに歓喜のときだった。現在の彼らはアンコールをしないが、それでも2度に渡る3人での礼は、心に染みた。
2012年サマーソニック(マウンテンステージ)、2013年武道館、2016年フジロック(グリーンステージ)と、ここ数年のシガー・ロスの来日は巨大会場が舞台になっていた。今回は9年ぶりの国際フォーラムで、ワタシの席は1階の真ん中辺りで、ステージやメンバーの様子がよく見えた。これはとてもありがたかった。あと彼らに期待するのは、2013年『Kveikur』以来となる、ニューアルバムのリリースだ。
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