Cocco 20周年記念 Special Live at 日本武道館2days ーニの巻ー(2017年7月14日)
先日の「一の巻」に続く、今回は「ニの巻」。まずは、ネガティブなことを先に書く。場内あちこちに空席が目立った。「一の巻」と違い当日券が出ていると聞いてはいたが、2つで1セットなはずの今回の2Daysで、なぜこのようなことになってしまうのか理解できなかった(もちろん、行きたくても事情があって行けなかった人もいただろうけど)。ワタシの隣2席も空席で、最後まで人は来なかった。
しかし、ライヴは「一の巻」と同様に、いや個人的にはむしろ「ニの巻」の方が素晴らしかった。
ステージには、多くの花が飾られていた。定刻より7分ほど過ぎたところでSEがかかり、客電が落ちる。バンドメンバーが先に姿を見せ、最後にcoccoが登場。さてオープニングは、『燦』かあるいは『愛しい人』あたりか・・・と予想していたら、なんとまさかまさかの『焼け野が原』!つまり、活動休止前のラストシングルは、今回の「一の巻」と「ニの巻」をつなぐ歌でもあったわけだ。
続くは『ドロリーナ・ジルゼ』で、これにも驚いた。彼女が主演した舞台『ジルゼの事情』のクライマックスで歌われた歌で、ダイナミックでスケール感に溢れつつ憂いを帯びた曲調は、とても序盤に合うとは思えなかったからだ。ライヴは始まったばかりだというのに、早くも大詰めを迎えてしまったような雰囲気になった。Coccoはブルーのロングドレス姿で、間奏時にステージ上で軽やかに踊っていた。
更に、追い討ちをかけるかの如く『強く儚い者たち』。彼女の看板の歌だが、ライヴでは中盤に歌われることが多く、それがまさかの3曲目とは。「一の巻」ではほぼ原曲通りに歌われていたが、今回はラストに彼女がスキャットを入れていた。去年のツアーでもそれをしていたので驚きはなく、むしろ驚いたのは「一の巻」と「ニの巻」で彼女が歌い分けていたことだった。
そしてそして、個人的に最も好きなCoccoの歌『遺書。』だ。「一の巻」では歌われなかったので、「ニの巻」では必ず歌われると思ってはいたが、まさかこんな序盤でとは。それにしても、いったいどれだけ大技を続ければ気が済むのだ。このライヴの構成は、いったいどうなっている?
アコースティックの『Raining』で、ようやく落ち着きモードに。Coccoはブルーのドレスを脱ぎ、ベージュのスリップドレス姿になっていた。さて、「ニの巻」は現在のCoccoを支えるバンドメンバーとの演奏で、向かって左から右にギター、キーボード、ドラム、ベース、ギターという配置。恐らくキーボードの人以外は去年のツアーメンバーと同じはずだ。ステージは後方にかなり横長に幕が立てられていて、照明が反射しビジュアル的な効果を発揮していた。
演奏は淡々と進み、もしかして「ニの巻」はMCなしか?と思いきや、『樹海の糸』を経て各メンバーの機材チェンジとなったとき、Coccoはギター重いのでまだ持ちたくないと言い(笑)、MCに。キャリア20年を迎えいつの間にか大人になっちゃったと語り、子供の頃大人について思っていたことについて話した。そしてようやくアコギを受け取り、「あのコたち大人になったかな」とぽつり。
「あのコたち」とは、もしかして・・・と思った瞬間、Coccoが歌い始めたのは『Heaven's Hell』だ。そう、「あのコたち」とは、2003年に沖縄でゴミゼロ大作戦をやったときの、地元の高校の吹奏楽部、中高生コーラスを含む、運営に携わってくれた学生たちのことだった。この曲、10分近い大作ということもあってか、あまりライヴでは演奏されない。個人的に今回は9回目の彼女のライヴなのだが、聴けたのははじめてだ。
この後も『手の鳴るほうへ』やSinger Songerの『オアシス』などレア曲を放り込んできて、ディープなファンをも飽きさせない。デビューシングル『カウントダウン』から『絹ずれ ~島言葉~』、そして『音速パンチ』と続くさまは終盤の追い込みをかけているようで、『BEAUTIFUL DAYS』を歌い終えてCoccoがステージを去ったときは、あれおしまい!?と思ってしまった。しかしバンドは演奏を続け、客電がつく様子もなかったので、きっと衣装替えをしているのだろうと思った。
生還したCoccoは、白のかなり丈の長いドレスをまとっていた。まるで天女のように舞い、そして『blue bird』へ。この日の彼女は終始笑みを浮かべながら歌っていて、ここまで楽しそうなさまを観たのはじめてだった。「一の巻」で以前のナイフモードを復活させていたのとは、別人のようだった。
2度目のMC。『Never ending journey』をリハーサルではうまく歌えないまま本番を迎えてしまい、リハではバンドメンバーに八つ当たりしてしまい、と話しはじめ、自分の歌には人を救う力があると言われてそう思い込んでしまい、だけど今まで自分に近い人たちを見送ることも何度かあって、自分の歌には力なんかないんだ、人を救うことはできないんだと痛感しているとのこと。
このMC、いったいどうやってまとまる?どこに着地する?と思いながら観ていた。彼女は話し続けた。救われたとか力をもらったと言ってくれるのは、受け取る人の方の力なんだって。だから自分は、ただ歌えばいいんだって。これが、彼女が着地した地点だ。そうして、『Never ending journey』を歌ったCocco。うまく歌えたと思うよ。そして、この曲も彼女の名曲のひとつなんだと、改めて気づかされた。
この後『ジュゴンの見える丘』を経て、ラストは『有終の美』。歌の終盤で、天井から何かが舞ってきた。ハート型の大きめの紙吹雪だった。この日ワタシは1階席で観ていたので、遠目に見るだけだったが、幕引きに相応しい光景だった。歌と演奏がすべて終わると、バンドメンバーはステージ前に勢揃い。そしてその中にCoccoもいて、皆で挨拶を。そしてステージに飾っていた花を持ち、袖の方に捌けていった。いちばん最後までステージに残っていたのがCoccoで、できる限り客席に向かって手を振っていた。
セットリスト
M1.焼け野が原
M2.ドロリーナ・ジルゼ
M3.強く儚い者たち
M4.遺書。
M5.Raining
M6.箱舟
M7.キラ星
M8.やわらかな傷跡
M9.樹海の糸
M10.Heaven's Hell
M11.手の鳴るほうへ
M12.オアシス
M13.カウントダウン
M14.絹ずれ ~島言葉~
M15.音速パンチ
M16.BEAUTIFUL DAYS
M17.blue bird
M18.Never ending journey
M19.ジュゴンの見える丘
M20.有終の美
2つで1つの20周年ライヴ、優劣をつけるつもりはないのだが、強いて言えば「ニの巻」の方が個人的に染みた。重鎮メンバーと共におこなった「一の巻」は、言ってみれば解散したバンドが一夜限りで再結成したのに似ていて、観ながら当時のことを思い出した。2000年10月の武道館ライヴや、翌2001年4月のMステで『焼け野が原』を歌い、感極まった彼女が走ってステージを後にしたときのことなどだ。
対して「ニの巻」は、その趣旨の通り現在の彼女の姿を目の当たりにすることができたと感じている。ゴミゼロをはじめたのも(『Heaven's Hell』)、踊るようになったのも(『blue bird』)、沖縄色を出すようになってきたのも(『絹ずれ』)、歌以外に女優としての活動をするようになったのも(『ドロリーナ・ジルゼ』)、活動休止から彼女が自分で地に足をつけてやり出したことだと思う。そして、彼女の歌うたいとしての「旅」は、これからも未来に向かって続くはずだ。だって、『Never ending journey』なのだから。
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