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Cocco 20周年記念 Special Live at 日本武道館2days ー一の巻ー(2017年7月12日)

公開日: : 最終更新日:2022/12/18 ライヴ

Cocco 20周年記念 Special Live at 日本武道館2days -一の巻-

個人的にのライヴを観るのは8回目になるのだが(うち武道館は5回目)、今回最も座席に恵まれた。ステージ向かって左側アリーナの3列目で、武道館で双眼鏡入らずのポジションに陣取れる機会は、そうはない。

開演時間を10分ほど過ぎたところでクラシックのSEが流れ、そして客電が落ちる。バンドメンバーが向かって左の袖から登場し、少し間をおいてCoccoも姿を見せた。オープニングは、今回の趣旨から言ってこの曲しかない、デビューシングル『カウントダウン』だ。エレキバイオリンのイントロが美しく、しかしCoccoの歌が始まると状況は一変する。

至近距離で観る彼女は、凄まじかった。上体を前後に大きく揺らし、右手にはマイクを持ち、左腕はバランスをとるように振りかざす。顔面には早くも汗がほとばしり、彼女は手のひらでかなり荒っぽく振り払う。時折顔にかぶさる髪も、手で払いのけながら歌う。彼女はこれだけの熱量をもって歌っていたのかと、思い知らされる。

歌は『水鏡』『けもの道』と続き、彼女の熱量は更に加速する。活動休止前の彼女はナイフのようにギラギラしていて、再開後は幾分か穏やかになったと思っているが、目の前で歌う彼女はナイフモードだ。まさか、今になってこのモードの彼女を観られるとは思わず、ぞくぞくしてきた。更に、歌は『走る体』『やわらかな傷跡』と続く。個人的には活動休止前のライヴを観たのは1度だけなので、こうした初期の曲をナマで聴けたのは嬉しかった。

最初のMCで、バンドメンバーをリレー形式で紹介。今回のライヴはCocco20周年の「一の巻」とされ、デビュー時に彼女のバックを務めていた面々とのこと。ギター長田、ベース根岸、ドラム向田と、初期の彼女を支えた顔ぶれが再び揃うのは感慨深い。そしてもうひとりのギタリストは、ムーンライダースの白井良明だ。Coccoが「良明くん」と呼んだのには、ぶったまげた。

序盤の熱量のままで行けるはずはないと思ってはいたが、中盤は長田と白井のどちらかあるいは2人ともがセミアコを弾く、穏やかモードに。メンバー配置は、向かって左から右に白井、根岸、向山、キーボード柴田、長田、バイオリン武藤という具合。彼らに囲まれるように、前方中央にCoccoがいる。

長田、白井、そして根岸の3人は、ほぼ1曲毎にギター/ベースを交換していた。曲の終盤になると20周年ハッピを着たスタッフが次のギター/ベースを本人に渡し、彼らは流れを切ることなくチェンジ。ワタシのポジションは根岸/白井側だったこともあり、根岸のベースがよく聴こえた。

長田と白井は、強いて言えば長田がリードギターで白井がリズムギターだったが、曲によりあるいは同じ曲の中でさえ、役割は適時入れ替わった。長田は浜田省吾で、白井はムーンライダースで、それぞれ観たことがあり、2人とも押しも押されもしない重鎮たちだ。長田の放つリフは時に荒っぽく、白井が駆使する電子音を介した変態リフは、ライヴならではの生々しさを感じさせた。

2度目のMCでは客に着席を促したこともあり、ここからは武道館はじっくり聴き浸るモードになる。今回のステージ、装飾は何もなく、バックドロップにスクリーンもなく、ただただバンドの演奏とCoccoの歌があるだけだ。そうした中、照明による演出効果が最も映えたのが『ポロメリア』のときで、ステージ後方のみならずサイドからも深紅のライトが演者たちを後押しした。アンセム『強く儚い者たち』や『樹海の糸』も、じっくりモードの中で歌われた。

着席からスタンディングモードに切り替わったのは、『音速パンチ』によってだ。この日のセットリストはてっきり活動休止前オンリーと思っていたし、この曲は「ニの巻」のオープニングになると予想していたので、意表を突かれた(中盤では『日の照りながら雨の降る』も歌っていた)。

個人的なハイライトは、この後にやってきた。まずは『焼け野が原』。活動休止前のラストシングルだ。そして、『風化風葬』。こちらは、同じく活動休止前のタイミングで沖縄限定でリリースされたシングルだ。これらを収録したアルバム『サングローズ』は、ナイフモードを経た彼女が悟りの境地に達した作品と思っていて、歌うたいとして何かを掴み、だからこそ一度活動をリセットする必要があったのではと思っているからだ。この2曲を、たて続けに聴けるとは。

このライヴどうやって締めるんだ?と思っていたところに、最後のMC。次の曲が最後ですと言い、20年やってきたことへの感謝の気持ちが抑えられず、何度もありがとうと言ってくれた。そして、選択されたのは新曲!?・・・いや、『もくまおう』という、ベスト盤にのみ収録されている隠れた名曲だった。

歌い終えたCoccoはバレリーナの礼を客席にもバンドメンバーにもし、投げキッスをし、走ってステージを後にした。袖にいたスタッフにしばらくの間抱きつき、やがて複数のスタッフにかかえられるようにステージを降りていくのが見えた。バンドメンバーはこの間演奏を続けていて、締めくくると全員がステージ前方に出て挨拶。主役のいない挨拶って、Coccoのライヴくらいだろう。

セットリスト 
M1.カウントダウン
M2.水鏡
M3.けもの道
M4.走る体
M5.やわらかな傷跡
M6.Drive‎ you crazy
M7.Raining
M8.しなやかな腕の祈
M9.コーラルリーフ
M10.日の照りながら雨の降る
M11.手の鳴るほうへの
M12.ありとあらゆる力の限り
M13.ポロメリア
M14.強く儚い者たち
M15.樹海の糸
M16.音速パンチ
M17.Rain man
M18.Rainbow
M19.焼け野が原
M20.風化風葬
M21.もくまおう 

個人的にはじめて彼女のライヴを観たのが2000年10月の武道館で、つまり活動休止前のラストライヴだった。当時のワタシは遅れてきたファンの気分で、少し肩身の狭い思いをしていた記憶があるが、今こうして振り返ると、むしろ「間に合った」のだと思う。どれほど濃密であっただろう、彼女がデビューしてから活動を休止するまでの4年の中に、だ。

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