Cocco『20周年リクエストベスト+レアトラックス』
coccoがデビュー20周年を記念して、デビュー日の3月21日にベストアルバムをリリースした。区切りなのはわかるが、ベスト盤はこれが3度目になるので、正直「またか」感はぬぐえない。しかし、前のベスト盤を持っているとしても、今回のベスト盤も入手する価値はある。
3種類のパッケージがあるうち、ワタシが入手したのは『初回限定盤A/完全生産限定』だ。CD3枚+DVD+豪華ブックレットという内容になっていて、『初回限定盤B』との違いはブックレットになる。これは、キャリアを横断するように見覚えのあるCoccoの写真のほか、幼少時の写真や小学校の通知表なども載っていて、結構思い切っている。
3枚のCDは、1枚目2枚目はシングルやリクエストを元にしたベスト。20年のキャリアを総括することもあるのだろうが、マストと思える曲が結構落ちていて、個人的には微妙(だからこそ、以前のベスト盤の価値が失われていない)。聴きどころは、3枚目の前半だ。冒頭の『初花凜々』こそくるりと組んだSinger Songerの曲で個人的にはお馴染みだが、続くのが尾崎豊の『ダンスホール』、そして松田聖子の『渚のバルコニー』ときた。彼女のカヴァー能力は・・・まずまずかな。
そして、DVDこそが最大の目玉だ。2000年10月のツアー最終武道館公演を収録。時期がアナログからデジタルへの転換期だったのか、画質こそ若干鮮明さを欠くが、これが商品化されたことにこそ意味がある。というか、よく本人商品化を許したなと思う。アルバム『ラプンツェル』に伴うツアーで、『けもの道』でスタート。首を大きく振り、ロングヘアーを乱す彼女は、今よりもぎらぎらしている。
バンドはベースに根岸、ギターに長田のDr.Strange Loveのコンビで、長田は活動再開後のある時期までCoccoをサポートし続けたが、2人が揃って彼女のバックを務めたのは、このときまでではなかっただろうか。アーティストとして彼女を最初に認めたのが根岸で、なんでこの才能を世に出さないんだと関係者に食ってかかったというエピソードを、ワタシは気に入っている。
ライヴDVDの場合、多くはMCはカットされがちだが、このDVDは彼女の3度のMCを漏らさず収録。彼女のMCは曲に劣らず重要だし、増してやこのライヴはなおのことそうだ。実はワタシもこのとき会場にいて、はじめて彼女のライヴを観たときだった。彼女は自身の喜びの裏側にある悲しみや苦しみを吐露し、見ている方まで胸を締め付けられる思いだった。
今見ると、活動休止に至る相当の覚悟を決めてのMCだったが、当時のワタシはツアーが終わって少しインターバルがあくぐらいのことにしか捉えていなかった。翌2001年、アルバム『サングローズ』のリリースと活動休止を同時にアナウンスし、衝撃が走った。4月にMステに出て『焼け野が原』を歌った後、彼女は歌手としての活動を休止する。
ラストの『羽根~lay down my arms~』は当時の未発表曲で後に『サングローズ』に収録されると共にシングルカットされるが、なんと『風化風葬』も前半で演奏されていた(こちらは後に沖縄限定でシングルリリース)。今なら聴きもらすことは絶対にない曲だが、当時のワタシはなんと迂闊だったことか。そんなワタシが反応していたのは、『強く儚い者たち』のギターイントロがやたらと長く、ロバート・フリップぽかったことだ。
2017年現在の彼女は、精力的に活動している。国内各地のロックフェスに出演し、7月には武道館で2公演を実施。14日は現在のバンド、そして12日はこのDVDのときのバンドとほぼ同じメンバーでのライヴだそうだ。そして、その後には待望のフジロック出演が控えている。
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