ボブ・ディラン 全年代インタビュー集
インタビュー嫌いとされるボブ・ディランだが、アメリカの音楽誌ローリング・ストーンに掲載されたインタビューをとりまとめた本があって、読んでみた。
1965年の記者会見にはじまり、当時20代半ばのディランはとんがっている。本心なのか適当なのかわからない独特の言い回しでまくしたて、はぐらかす。映像『Don't Look Back』で垣間見ることのできるディランとほぼ同じイメージだ。かと思えば、後にローリング・ストーン誌の編集長になる男との対面インタビューでは、驚くほど素直に受け答えしていて、むしろこちらの方に驚いてしまう。
全編がディラン本人のインタビューではなく、記者が書いた記事でところどころにディランのコメントが組み込まれていたり、あるいは、周辺にいる人によるディランの人物像もあったりして、場合によってはこちらの方が面白い。ディランがシンガーとして売れ始めた頃、幼馴染の女性に声をかけて付き合ってほしいと言ってきてその女性がびっくりしたとのこと。当時、ディランがジョーン・バエズと付き合っていたのは周知の事実だったからだ。
そのジョーン・バエズの証言は、更に興味深い。ディランがアコースティックからエレクトリックに移行する頃、バエズはディランのツアーに帯同したものの、ステージに立たせてもらえなかった。バエズはディランが招き入れてくれるのを期待したが、とうとうそれはならなかった。このときのバエズは、アーティストではなくディランのスタッフ同然の扱いだった。そして、ディランには新しい彼女ができていたことがわかった。
若きディランの女性関係が暴かれるにつけ、ディランは神様でも聖人でもなく、ひとりの男なんだなと思わせてくれる。しかし、男なら共感できるところもあるが、果たして女性はどうか?とも思ってしまう。
インタビューは80年代や90年代、そして21世紀のものもある。日本のメディアにとってはディランのインタビューをとるのはかなりのハードルに思える一方、どうやら、全くインタビューを受けないわけでもないらしい。プリンスのように基本的にアルバムとライヴ以外のコミュニケーションを求めていない人だと思っていたが、そのときそのときの気分によるようだ。
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