ザ・コンサルタント(ネタバレあり)
会計士クリスチャン・ウルフは、大企業から財務調査の依頼を受けて帳簿のつじつまが合っていないことをつきとめるが、なぜか依頼が突然打ち切られてしまう。財務を取り仕切っていた重役は殺害され、更にはクリスチャンと企業の経理部のデイナも命を狙われる。
合間合間にクリスチャンの過去が挿入され、何者かがわかってくる。高機能自閉症で(コレは予告編や宣伝では伏せられている)、人と接するのは苦手だが数学の処理能力が卓越している。更には軍人の父に鍛えられ、武術および銃器の扱いに長けている。
クリスチャンをベン・アフレックが演じている。自閉症を抱える会計士にして裏の顔も持つという役どころだが、抑えた演技や奇妙なルーティーン、迷わずに敵の頭を撃ち抜く冷徹さ、それでいて家族愛を忘れていないというキャラクターは、ベンと監督が一緒に作り上げたのだろうか。これまで、『アルゴ』『ゴーン・ガール』『バットマンvsスーパーマン』などを観てきたが、その中では抜きん出て素晴らしい演技だと思う。
デイナをアナ・ケンドリック、財務省の役人レイをJ・K・シモンズが、それぞれ演じている。デイナは使途不明金に最初に気づいたことからクリスチャンと接するようになり、命を狙われたときはクリスチャンに救われる。不器用なクリスチャンとも、少しだが心を通わせる。レイとクリスチャンは浅からぬ因縁があるが、それは2人の温かい人となりを見せることとなっている。
前半で張っていた伏線は、後半で見事に回収されている。その中でも個人的に気になったことが3つあったが、2つまでは予測し的中させたものの、あとひとつは予測ができなかった。的中できたのは、黒幕が誰かと、黒幕に雇われている殺し屋とクリスチャンとのつながり。黒幕は、怪しいとされていた人物が次々に殺されていったので、推測は容易だった。殺し屋の素性も、クリスチャンの過去のシーンを観ていてピンと来た。クライマックスでクリスチャンが攻めてきたとき、お前早く気づけ早く気づけと思いながら観ていた(笑)。
読めなかったのは、クリスチャンをサポートする声の主だ。最初はAIかと思ったが、滑らかに会話しているので違うと感じた。次はクリスチャンの肉親かと思ったが、回想シーンで亡くなっているのが描かれてしまったので、これも消えた。そうこうしているうちにクライマックスの銃撃戦になり、その後のエピローグで声の主が明らかになって、うわーやられたと思った。
大きな期待を抱かずに行くことを決めたが、ネット上での評判がすこぶるいいので、逆に不安になっていた。が、結論としてはいい出来の作品だ。シリーズ化すれば、ベン・アフレックの代表作のひとつになりうる作品だ。
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