MILES AHEAD / マイルス・デイヴィス 空白の5年間(ネタバレあり)
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最終更新日:2021/03/14
Miles Davis ボブ・ディラン, マイルス・デイヴィス
1970年代後半のニューヨーク。活動休止中のマイルスの自宅に、ローリング・ストーン誌の記者デイヴが押しかけてくる。しかし、体調不良でドラッグと酒に溺れるマイルスは、活動を再開できるような状態ではなかった。また、あるとき悪徳プロデューサーに未発表のマスターテープを盗まれてしまい、取り戻すべくデイヴと共に激しいカーチェイスや銃撃戦を繰り広げる。
活動休止中のマイルスを劇中の現在とし、合間に元妻フランシスとの出会いから結婚生活、そして別れに至るまでの映像が組み込まれる。自業自得とはいえ、フランシスを失ったマイルスは大きな喪失感を抱えていた。彼女をジャケットにプリントしたアルバムもあり、デイヴの知り合い(マイルスの大ファン)からドラッグを入手した際、そのアルバムもちゃっかりいただいていく。
伝記映画ではなくフィクションという話は事前に少し聞いていたので、違和感はなかった。活動休止中にこんなこともあったのでは?という、創作なのだ。マスターテープを取り戻しに地下ボクシング場に乗り込んだ際、リングの外でマイルスがプロデューサーとやり合っているとき、リングの上には若いマイルスが演奏するというシーンもある。ボブ・ディランを題材にした『アイム・ノット・ゼア』に似通った作品だと思うのがいいかもしれない。
ドン・チードルが監督・共同脚本・製作・主演をこなし、マイルス愛を爆発させている。デイヴはユアン・マクレガーで、劇中で2人は相棒のような関係になっていく。個人的には、ラスト前まではマイルスではなくドン・チードルがあれこれやっているように見えていたのだが、ラストの時空を超えたかのようなライヴパフォーマンスには、マイルスが憑依したのではと思わせる迫力があった。バックは、ハービー・ハンコックやロバート・グラスパーらが固めていたそうだ。
マイルスに明るい人なら、劇中のバンドメンバーであの人が誰役とかいうのが手に取るようにわかったかもしれない。個人的にはジャズはほぼ聴いたことがなく、唯一と言っていいのがマイルスのベスト盤と映画『死刑台のエレベーター』のサントラくらいだ。そんなワタシがちょっと嬉しくなったのは、マイルスがコロンビアレコードに押しかけたとき、エレベーターに飾られているアルバムの中に、ボブ・ディラン『The Times They Are A-Changin'』を見つけたことだ。
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