スプラッシュ(1984年)
家族で客船に乗っていた少年アランは、海に飛び込んで溺れてしまうが人魚に助けられる。20年後のニューヨーク。成人したアランは、兄と共に青果市場を営んでいた。恋人にフラれたアランは、懐かしさと安心感を覚える岬にふらっと出向き、そこで再び溺れてしまう。アランを救ったのはまたも人魚で、その後彼女は、アランが海中に落とした財布を持ってニューヨークに現れる。アランに会うために・・・。
ファンタジーとラヴコメとが同居する作品で、見どころはやはり水中での人魚が泳ぐシーンだ。人魚は地上では人間の足になるが、水に濡れると大きなヒレに変化し、それで水中を泳ぎ回る。もちろんスタントを使っているのだろうが、水中を自在に泳ぎ回るさまは美しいし、このシーンを収めただけでこの映画は成功していると言える。ストーリー的には、後半で彼女が人魚であることが公になってしまい、マスコミに追い回され政府に捕獲されて実験材料にされてしまう。彼女を助けようとするアランに加勢するのが、彼女が人魚であることを暴いた科学者と、アランの兄だった。
まず科学者だが、人魚であることを証明できたはいいが、それでも学会では変人扱いされて相手にされず、結果的に人魚とアランを傷つけてしまったことを悔いてアランに協力する。一方の兄だが、キャラ的には弟のアランとまるで正反対の性格。アランはしっかり者だが恋愛には臆病で、一方の兄はスケベでお調子者で、一見するとどうしようもないあんちゃんだ。しかし彼女が人魚であることをアランが知り、アランが困惑しているときにこの兄がびしっと決める。偏見を持つな、彼女と一緒にいるときのお前が一番輝いているじゃないかと、厳しくも優しさを以って接している。ある意味、この作品の中で最も得をしている役かもしれない。
主人公アランをトム・ハンクス、人魚をダリル・ハンナが演じている。キャリアにおいてもかなり早い時期の主演作ということもあり、細身で若々しく、どこにでもいそうな等身大の青年を好演している。ダリル・ハンナは、『ウォール街』でチャーリー・シーンとマイケル・ダグラスとの間に立つ女役や、『ブレードランナー』のレプリカント役などを観たことがあるが、この作品が代表作と言ってもいいと思う。監督はロン・ハワード。近年は『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズのトム・ハンクスとの名タッグぶりが記憶に新しいが、2人が最初に組んだ映画がこの作品になると思う。
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