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Cocco@NHKホール

公開日: : 最終更新日:2022/12/18 ライヴ

Cocco@NHKホール

今年、2年ぶりにアルバム『アダンバレエ』をリリースし、夏フェスもいくつかこなした。自身のツアーは2011年のベスト盤のとき以来で、個人的にもZepp Tokyoで観て以来5年ぶりになる。そして、今回の会場はNHKホール。武道館やライヴハウスでは観たことがあるが、ホールで彼女を観るのははじめてだ。

定刻を5分ほど過ぎたところで客電が落ち、まずバンドメンバーが登場。少し間を置いてから、Coccoが姿を見せた。薄暗いステージの中、『愛しい人』でスタート。Coccoを前方中央に、両サイドが2人のギタリスト。後方は、右から左にキーボード、ドラム、ベースという配置だ。5年前とは、ドラマー椎野、向かって右のギター藤田以外は、別の人になっている。

そしてCoccoだが、序盤から声量がすごい。そもそもアリーナクラスの力量を持っている人なので、ホール会場など狭いくらいだが、にしてもすさまじい。少し前に『エメラルド』のときのライヴDVDを観ていて、このときは前半声ががさがさだったので、一層素晴らしく聞こえてしまう。

白いロングドレスに裸足で、髪は首を覆う程度。彼女にしては短めだと思う。右手にハンドマイクを持って熱唱し、上体を前後に大きく振る。左手は自然と振り回されているのだろうが、彼女の中に宿る膨大なエネルギーが溢れているように思える。

セットリストは、『アダンバレエ』に伴うツアーだから当然といえば当然だが、このアルバムからの曲がかなり多い。そんな中、序盤での『樹海の糸』は、現在放送中のNHKのドラマの主題歌になっていることにリンクしているのかな。

『花も咲いたよな』の後でメンバー全員がステージを捌け、バックドロップにスクリーンが降りてきてCoccoが踊る映像が流れる。今回、彼女はイントロや間奏でも結構踊っていて、以前よりも踊りが占める比重が少し大きくなっている。彼女にとって、歌は「やらなくてはならないこと」、踊りは「やりたいこと」なのだそうだ。

さて後半戦だが、彼女は衣装替えしていて、白と紫のドレス姿になっていた。また、前半は照明の色合いでよくわからなかったが、ここに来て(先日のMステで観てわかってはいたけど)髪の色が茶色に染まっているのがわかった。

ここでマストソングの『強く儚い者たち』だ。この曲は、彼女の熱唱ぶりもさることながら、ギタリストの腕の見せどころでもあって、ディストーションを効かせたイントロリフなど、聴いていてぞくぞくする。今回の2人のギタリストは、どちらがリードでどちらがリズムギターというのはきっちりしてはおらず、曲によるようだった。

続いて、ファースト『ブーゲンビリア』からの『遺書。』だ。ライヴでこの曲を聴くのは、いつ以来になるだろう。もちろん、彼女の作品はどれも素晴らしいしクオリティが高いが、今もってこの曲がワタシにとってのCoccoのベストソングだ。美しさと優しさと切なさがミックスされ、なんとも言えない気持ちにさせられる。彼女は、どういう気持ちでこの歌を歌っているのだろうとも思ってしまう。

『コスモロジー』では、バックドロップに沖縄の映像が流れた。前半は観光地としての「明」の部分を、そして後半は基地との共存を強いられている「暗」の部分をだ。ここ数年の彼女は、ジシャンとしてだけでなく演者や映像の方にも寄っていたので、彼女がずっと背負い続けている「沖縄」を伝える手段として、このような形になったように思える。

終盤の『眠れる森の王子様 ~春・夏・秋・冬~』~『蝶の舞う』~『有終の美』は曲間を切らずに続け、緊張感が一気に増した。そして、ここでこの日初にして唯一のMC。客席を軽くいじりつつ(今回は「ファミリー席」なる券種があったせいか、小さな子供も結構いたようだ)、メンバー紹介をしてひとことずつしゃべらせる。彼女自身のひとことは、「あしたは大安」だった。

ラストは、『アダンバレエ』のラストナンバーでもある『ひばり』だった。演奏が終わると、バンドはステージ前方に出て横一列に並び、礼。これは多くのアーティストにとっては当たり前の光景だが、Cocco自身はここにたどり着くまで多くの葛藤があったはずだ。自らの歌が終わると走ってステージを後にしていた頃が、逆になつかしい。そして彼女はメンバーが引き上げた後もステージに残り、目いっぱい手を振っていた。

セットリスト
01 愛しい人
02 希望の光
03 樹海の糸
04 フレア
05 卯の花腐し
06 Sleeping Beauty
07 影踏み
08 椿姫
09 Rosheen
10 海原の人魚
11 花も咲いたよな
12 強く儚い者たち
13 遺書。
14 コスモロジー
15 楽園
16 すみれ色
17 BEAUTIFUL DAYS
18 眠れる森の王子様 ~春・夏・秋・冬~
19 蝶の舞う
20 有終の美
21 ひばり

ここ数年で表現者としての活動の幅を広げたことがフィードバックされ、ミュージシャンとしての彼女の懐を一層深くした印象だ。今回のツアーは10月いっぱいまで続くが、その後彼女がどう動くかも楽しみだ。年末のフェスに、エントリーされないかな。

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