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浦沢直樹の漫勉 池上遼一

公開日: : 最終更新日:2024/04/13 池上遼一

アダムとイブ (1)

NHKのEテレで、『漫勉』という番組が不定期に放送されている。タイトルは漫画を勉強するという意味で、浦沢直樹が進行役を務めている。漫画家が作画する様子を定点カメラで撮影し、後日ご本人と浦沢が映像を見ながら対談するという構成だ。

この日は第3期の初回になり、漫画家は池上遼一だった。ほかの漫画家でも思うのだが、作画している様子を撮影されるのを、嫌がらずによく引き受けるなと思ってしまう。そして池上の場合は、テレビに顔が出るのが照れ臭いとかで、顔出ししないことを条件にしたそうだ。画面には、ラフな自画像が被せられていた。

作画が撮影された作品は、連載中の『アダムとイヴ』、そしてまもなく連載が始まる『BEGIN』の2本。鉛筆で下書きし、パソコンに取り込んで左右反転させていた。反転は結構漫画家あるあるらしく、右利きの人は右向きの人物が、左利きの人は左向きの人が書きにくいのだそうだ。

もちろんすべてのマンガを読んではいないが、池上遼一は日本で最も上手い漫画家だとワタシは思っている。繊細な劇画タッチで描かれる男女は、まるで写真のように美しい。そして、浦沢もそれに近い感覚を持っていたことが、番組を観てわかった。同業者ですらリスペクトする、あるいは嫉妬する、驚異的な画力だと思う。

池上本人は、読み手に日本人であることを誇りに思ってほしいという、願いを込めているとのことだった。『男組』が始まったときはまだ荒さがあったが、中盤以降は画が洗練されていった。『サンクチュアリ』『HEAT -灼熱-』のときには、完成度の高さが尋常ではなくなっていた。池上が描く画も、そして池上遼一その人も、日本の誇りだ。

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