スウェード(Suede)@赤坂Blitz
今までスウェードのライヴを観てきて、今回こそが最高のライヴだと思ったことが何度かある。ナノムゲンフェスのときや、『Bloodsports』のツアーをShibuya-AXで観たときなどだ。しかし、しかし、敢えて言おう。今夜のスウェードこそが最高のライヴだと。
ステージはスクリーンで覆われ、これは映像を流すためと読んだ。客電が落ち、メンバーが配置につくのがスクリーン越しにわかった。そして、映像だ。新譜『Night Thoughts』の初回盤についてきたDVDの映像まんまで、そして曲もあたまの『When You Are Young』だ。SEのみからバンドの生演奏が加わり、重厚感が増す。続くは、曲順もそのままに『Outsiders』だ。スクリーン越しにリチャード・オークスがギターをかきならす姿がわかり、そして中央のブレット・アンダーソンが半身で熱唱する姿もわかる。
そして『No Tommorow』だ。ここまで来て、ワタシたちはこの後何が起こるのかを察知した。『Night Thoughts』の全曲再現なのだ、と。この新譜は曲のクオリティは高く、再結成前のレベルに追いついたのではと思える反面、トータル性が強くて個々の曲をそれぞれ演奏するのはどうかなと思っていた。そしたらこう来た。このアプローチは、正しいと思う。
映像は青年とその家族を追い、時にイマジネーションと思われる場面も挿入される。邦題『夜の瞑想』のイメージにも合っている。そして、時折スクリーン越しにメンバーの姿が明らかになるのだが、これがまたいい。2次元というより演劇とのシンクロを果たしているような錯覚を覚え、スウェードがパフォーマーとして、ストーリーテラーの手法を会得したのではと思わせる。サウンドのみならずアートにも独自性を持つ彼らが、いつかはやってみたかったことなのかもしれない。
約20分のインターバルを経て、第2部へ。『Trash』でスタートし、ブレットは溢れんばかりのエネルギーをマイクに集中させると共に、ステージを降りてオーディエンスを煽る。『Filmstar』から『Lazy』となったところで、ふと引っかかるものがあった。もしや、これは・・・?そしてその引っかかりは、5曲目の『She』で確信に変わった。
第2部は、サードアルバム『Coming Up』の全曲再現ライヴなのだと。
評価が定まったアルバムならともかく、新譜を全曲演奏するのはかなりチャレンジングと思った。ただ『Night Thoughts』はそうするだけの価値があるアルバムだとも思い、納得した。しかし、この展開は何だ。リリース20周年にリンクさせてとは言え、アルバム2枚の全曲再現なんて前代未聞だ。しかもそれが、バンドの代表作と言っていい『Coming Up』なのだから。嬉しい誤算にも程がある(笑)。
トータルアルバム的な新譜とは対照的に、『Coming Up』は個々の曲のクオリティの高さに打ちのめされ続ける展開だ。『Trash』『Beautiful Ones』という、キャリアを代表する曲を備えているだけでも驚異的だというのに、『By The Sea』『Starcrazy』といった辺りが、脇を固める佳曲におさまってしまっている。他のアーティストなら、アルバムの顔になってもおかしくない曲なのにだ。そんな想いを抱いているうちに、いつのまにかラストの『Saturday Night』になっていた。
そして、ダメ押しのアンコールだ。『Metal Micky』経て、バンドの原点とも言っていい『Animal Nitrate』だ。ブレットはインターバルがあっても着替えておらず、汗だくのシャツ姿のまま最後の熱唱をした。そしてワタシたちオーディエンスも、ブレットに応えるように熱唱した。
セットリスト
第1部:アルバム『Night Thoughts』全曲再現ライヴ
1. When You Are Young
2. Outsiders
3. No Tomorrow
4. Pale Snow
5. I Don't Know How To Reach You
6. What I'm Trying To Tell You
7. Tightrope
8. Learning To Be
9. Like Kids
10. I Can't Give Her What She Wants
11. When You Were Young
第2部:アルバム『Coming Up』全曲再現ライヴ
13. Trash
14. Filmstar
15. Lazy
16. By the Sea
17. She
18. Beautiful Ones
19. Starcrazy
20. Picnic by the Motorway
21. The Chemistry Between Us
22. Saturday Night
アンコール
23. Metal Micky
24. Animal Nitrate
本来はサマーソニックへのエントリーでの来日だが、タイムテーブルがレディオヘッドとまるかぶりになっていることから、エクストラのこの公演に足を運んだ。そして、この選択は絶対に正しかったと言える。たとえレディへとのかぶりがなかったとしても、ソニックステージのヘッドライナーをザ・1975に持っていかれ、時間もきっちりと決められているサマソニでは、今夜のようなスペシャルなライヴをおこなうのは難しいと思うからだ。
再結成以降、パフォーマーとしては申し分ないが、クリエイターとしてはどうしても解散前のクオリティレベルにまで持って行けていないという違和感があった。がしかし、今のスウェードは違う。彼らは、恐らく再結成以降最高の、そしてバンド史上何度目かのピークを迎えているはずだ。
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