Björk Digital ―音楽のVR・18日間の実験
お台場の日本科学未来館で開催されている、「Björk Digital」というビョークの展示を体験しに行ってきた。
ブースは大きく3つある。ひとつは、前作『Biophilia』の全曲アプリを操作できるブース。6インチ程度のスマートフォン(iPhoneではなくアンドロイドだった)にて、曲毎に固有のアニメーション映像やインストバージョン、歌詞などが楽しめる。このアプリ、iTunesでは1,600円で販売されている。
ふたつめは、ビョーク歴代PVをスクリーンで観るブース。時系列順になっていて、初期はさすがに画質が荒いが、曲が進むにつれてクリアになっていくのがわかる。摩訶不思議な世界観は、考えるのではなく感じるものと思わせてくれる。
そして3つ目が、VR(ヴァーチャル・リアリティ)のブースだ。日時指定のチケットが必要で(半券があれば、上記2つのブースは当日に限りフリー入退室可)、予定時間の少し前に整列し、通路に通されてVR機器の説明を受ける。そして、いよいよ体験室に入る。
VR機器は、大きなゴーグルとヘッドフォンだ。つけた瞬間に映像が始まる仕組みになっていた。3曲のPVを、立体的なばかりか、360度全方向で体験できるというもの。1曲目『Stonemilker』は、浜辺や岸壁でビョークが歌う映像で、ビョークが時計回りに動き、追いかけると映像もその通りに移り変わる。2曲目『Mouth Mantra』は、タイトルの通り口の中や食道と思われる映像が繰り広げられた。
そして3曲目だが、今度は上から吊るされているVR機器をセットし、立って映像を体験。曲は『Notget』で、ビョークの全身が粒子で形成されていて、単に映像を観る、曲を聴くだけでなく、粒子に手をかざしたり、粒子の中に潜り込むこともできる(ビョークの中に入っていく感覚になる)。なんとも不思議で、そして画期的だ。
VR体験は約30程度だったが、これはすごかった。そして思ったのは、最新テクノロジーを活用し追求せんとする、ビョークの貪欲なまでの姿勢だ。過去20年、Windows95が流行ったときにCD-Romソフトを出したアーティストはいた。DVD黎明期の頃、マルチアングルうなどの多機能を盛り込んだアーティストもいた。そして2016年現在、ビョークは最もインタラクティヴな手法を駆使している、最先端のアーティストだと言えるのではないだろうか。
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