グラフィティ・ブリッジ(映画、1990)
クラブ「グラム・スラム」を経営し、自らもステージに立つキッド。別のクラブを所有するモリスは、グラム・スラムの経営権を渡すようキッドに詰め寄る。そこへ、謎の女オーラが登場した。
この作品は、確か日本公開はされなかったと記憶している。ワタシは、卒業旅行でニューヨークに行ったときにタワレコで買っていて(当然ながら字幕なし)、帰国後観ていた。『アンダー・ザ・チェリー・ムーン』は今回改めて観て見直せるところがあったが、こっちは当時も今回も相変わらずキツいものがある。
『パープル・レイン』の続編とされるが、とってつけた感が否めない。モリスがキッド(プリンス)とその曲やスタイルをコケにするという図式は、違和感ありあり(『パープル・レイン』は、キッドに少年性をにじませることでなんとかそれらしく見せていた)。オーラの存在は、キッドにとっては意味あるものだったように見えるが、ではモリスにとってはどうだったのかが、よくわからない。それまで対立していた2人が、立ち位置の不明確なオーラによって和解してしまうというのが、いよいよ謎だ。
ほとんどがセット内での撮影というのも、作り物感が出過ぎていてリアリティーを感じさせない(中盤、キッドがオーラをバイクに乗せて走るシーンが、唯一のロケではなかっただろうか)。映画作品というより、プリンスとそのファミリーの長編PVだと考えれば、まだ鑑賞に耐えられる。若き才能テヴィン・キャンベル、大御所ジョージ・クリントン、ベテランのメイヴィス・ステイプルズの客演は、結構儲けものだ。
もしも、と思うポイントがひとつだけある。オーラは神の使いとされ、髪を伸ばしたキッドはキリストのようでもある。つまり、スピリチュアルな世界についての知識を備えていれば、なぜこのような作り方をしているのかを理解できるのかもしれない。『パープル・レイン』はほぼ等身大、『アンダー・ザ・チェリー・ムーン』は別人格のクリストファー・トレーシー(この時期、このペンネームでバングルスらに曲提供している)、そして本作は神への傾倒、という見方は短絡的かな。
特典映像は音楽PV集だが、『The Question Of U』のライヴバージョンはこれが初見だった。
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