スポットライト 世紀のスクープ(ネタバレあり)
2001年。ボストンの大手新聞「ボストン・グローブ」に、バロン新編集長が就任。精鋭チーム「スポットライト」の4人に、教会の神父が少年少女に性的虐待を加えた事件を記事にするよう指示する。まず、新聞社として裁判所に証拠書類開示の申請をおこない、一方でチームは被害者や教会の弁護士などに取材を行う。
はじめは口が固かった人たちも、チームの熱心な姿勢に動かされ、少しずつ真実を語るようになる。取材を続けるうち、虐待をしていた神父がひとりふたりではなく、ボストンだけで90人前後はいるという事実を突き止める。そして、教会が神父たちを通常よりも早いサイクルで異動させるなどの隠ぺいを行ってることがわかる。証拠書類も、教会の妨害によって開示が困難になっていた。
実話をもとにした社会派ドラマだ。ド派手な見せ場があるわけでもない、どちらかというと地味な展開だ。しかし、上記のように取材の中で驚愕の事実が次々に明らかになったり、実は虐待をしている神父も少年時に虐待を受けていたことがわかったりするなど、静かなトーンの中にただごとではない空気が交錯する。
キャストは、マイケル・キートン、マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムスなど。3人が3人とも主役と言って言い過ぎではない。マーク・ラファロは熱血漢の記者役で、はじめは非協力的だった弁護士に粘り強くくらいつき、核心に近づいていく。レイチェルは被害者に寄り添う物腰柔らかい姿勢でいながら、芯の強さを持っている。チームまとめ役のマイケル・キートンは、生まれも育ちもボストンで、豊富な人脈と駆使して取材を進めるが、その根底にあるのは街を愛する心だ。
しかし、スポットライトやボストン・グローブの面々が何もかも正しく素晴らしいわけではない。弁護士や被害者保護の団体に取材する中、情報は数年前に送っていると言われる場面が何度かある。すぐ手元に手がかりがありながら、自分たちは見逃し、何もしてこなかったのだと、思わされる。劇中はっきりと描かれてはいないが、情報を受けていながら何もしなかった当事者は、マイケル・キートンの上司の部長ではないかと思う(『シビル・ウォー』でハワード・スターク役の人が演じている)。
アカデミー作品賞や脚本賞を取っても納得の傑作だが、日本ではどうも部が悪いらしく、公開回数を減らされたり、公開終了してしまったりという状況に。うーん、そうかあ。
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