ボブ・ディラン(Bob Dylan)東京ドームシティホール 2016年4月23日
2年ぶりという割と短めのインターバルでの来日公演は、ホールツアーとなった(2010年・2014年はライヴハウスツアー)。日程は、4月4日から28日までというロングスパンだが、この人にとっては当たり前のことだ。
予定時間をわずかに過ぎたところで客電が落ち、するとスチュ・キンボールが出てきて、暗いステージにてしばしセミアコをかき鳴らす。やがてほかのメンバーも登場し、ステージが明るくなり、『Things Have Changed』でショウは始まった。
バンドメンバーは、恐らく2年前と一緒だと思う。向かって左から右に、スチュ、ドラムのジョージ・リセリ、ベースでバンド最古参のトニー・ガーニエ、ギターのチャーリー・セクストン、ペダルスティールのドニー・ヘロンという5人。そして、前方中央に立つのがボブ・ディランだ。
ディランはクリーム色のハットを被り、黒(もしかして紺かも)のスーツに白のネクタイ姿だ。3本あるマイクの真ん中のスタンドを右手で握り、左手は腰に当てて歌う。さすがに年とったなとは思うものの、それでもまだまだ現役感がにじみ出ている。
ギターを弾かず、曲によりアルバム『Tempest』からのシングル『Duquesne Whistle』までが第一幕で、次からがスタンダードナンバー中心の第二幕だ。現時点での最新作『Shadow Of The Light』、そして来月リリースされる新譜に先駆けたミニアルバム『Melancholy Mood』からの曲が中心になる。ディランは90年代前半の頃、自分はスタンダード/トラディショナルの洗礼を受けた「最後の」世代だと言っていて、21世紀以降その方面の作品が多いのは、それを伝承しようとしているのではと思う。
最近の2枚は、CDで聴くとかなり地味だ。では、ライヴの場ではどうか。バンドサウンドは抑え気味になっていて、ディランのヴォーカルがより引き立つ格好になっている。やはり少し地味だが、その分ディランのシンガーとしての力量を堪能できる瞬間だ。
『Tangled Up In Blue』で第一部を終えると、ディランは日本語で「ミナサンアリガトウ」と言い、少ししたらまた戻ってくるよと英語で続けた。ディランがしゃべったのは、ライヴを通じてこのときだけだった。
20数分のインターバルを経て、第二部は『High Water』でスタート。ペダルスティールからバンジョーに切り替えた、トニーの貢献度が高い。そして、再びスタンダード/トラディショナルなモードへ。この分野に明るくないワタシにとって、お前はついて来れるのか?来れないのか?と、ディランに試されているようだ。しかし、古い音楽のはずなのに古さがなく、むしろ今現在の音として鳴っているのが素晴らしい。それは、ディランとバンドの腕および情熱によるものだ。
『Spirit On The Water』のとき、ピアノを弾くディランと、トニーとが演奏中にアイコンタクトを取り、2人とも笑っていたのが印象的だった。リラックスしたディランが見られるのって、珍しいような気がする。続く『Scarlet Town』は一聴すると難解そうだが、ここでは生演奏によって解体〜再構築されていて、耳当たりがよくなっている。
そして、2年前でも個人的にハイライトだった『Long And Wasted Years』だ。CDではシンプルな曲調に抑えられているが、ライヴの場ではパワフルかつエモーショナルなサウンドとヴォーカルに生まれ変わっている。歌い演奏され続けることで、21世紀の『Tangled Up In Blue』になりそうな予感だ。
アンコールは『Blowin' In The Wind』『Love Sick』の2曲で、ここまでの流れを思うと、ボ-ナスというかファンサービスのように思えた。全てが終わると、メンバーはおのおのの楽器から手を放した。ディランは少しの間ステージから客席の様子を伺っていたが、やがて引き上げていった。
セットリスト
Act 1:
1 Things Have Changed
2 She Belongs To Me
3 Beyond Here Lies Nothin'
4 What'll I Do
5 Duquesne Whistle
6 Melancholy Mood
7 Pay In Blood
8 I'm A Fool To Want You
9 That Old Black Magic
10 Tangled Up In Blue
Act 2:
11 High Water (For Charley Patton)
12 Why Try To Change Me Now
13 Early Roman Kings
14 The Night We Called It A Day
15 Spirit On The Water
16 Scarlet Town
17 All Or Nothing At All
18 Long And Wasted Years
19 Autumn Leaves
Encore:
20 Blowin' In The Wind
21 Love Sick
ボブ・ディランの来日公演に追加が出るのは最早恒例行事で、この日の公演も再追加だった。ワタシはもともと25日のチケットを入手済みで、つまりこの日と連チャンになる格好だが、明後日のオーチャードホールでの公演も楽しみにしている。
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