ザ・ビーチボーイズ(The Beach Boys)『Live At Knebworth 1980』
ビーチ・ボーイズ1980年のライヴDVDを観た。舞台はフェスティバルでもお馴染みのネブワースで、野外会場である。演奏は『California Girls』に始まり、ほぼベストヒットと言える構成。特に本編終盤の『I Get Around』から『Surfin' USA』までの展開は圧巻だし、アンコールの『Good Vibrations』でのオーディエンスのノセっぷりや、オーラスの『Fun,Fun,Fun』での熱狂ぶりは尋常ではない。ライヴの場においては、こうしたロッククラシック/スタンダードを、何10年にも渡って畳み掛けてきたのであろう。
曲やライヴの展開のほかに気になったのは、カメラワークだった。リードヴォーカルのマイク・ラヴを中心に、ギターのカール・ウィルソン、ドラムのデニス・ウィルソンをアップで捕らえるショットが多い。実はこのステージには、ブライアン・ウィルソンも出演している。ブライアンはステージ右端でピアノを弾くことが多いのだが、アップの回数は明らかに少なく、ステージ全体のショットからも切れていることが多い。現在精力的に音楽活動を行っているブライアンからすれば信じられないほど薄っぺらな扱われようだが、1980年当時は、そして特にライヴの場では、これが実情だったのだろう。
このときのブライアンは、まだ精神を病んでいる最中だった。顔も体型もふっくらしていて、朴訥とした印象だ。マイクがほとんど1曲毎にMCを発し、他のメンバーも適度にしゃべっているのに対し、ブライアンのMCシーンは一度もなし。他のメンバーとのコミュニケーションを取るようなそぶりも、なかった気がする(映像としてカットされただけかもしれないが)。
ブライアンの2人の弟、デニスもカールも今は亡く、ビーチ・ボーイズはマイク・ラヴが牽引しライヴ活動を軸として存続している。一方のブライアンは、ソロアーティストとして恐ろしいほどに充実した時期を迎えている(2012年には、50周年でブライアンもビーチ・ボーイズに加わったこともあった)。時の流れとは、なんとも奇妙で、そして残酷なものだ。
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