David Bowie & Friends『Birthday Celebration-Live in NYC 1997』
今から19年前の1997年1月9日。その前日に50歳の誕生日を迎えていたデヴィッド・ボウイのバースデイ・コンサートが、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで開催。その非公式DVDを観た。画質は荒く、当時のアナログ映像をそのままDVDにしただけのような出来だが、内容は大きく2つの意味で必見だ。
まずひとつめは、豪華ゲスト陣とボウイとの共演だ。フランク・ブラック、フー・ファイターズ、ロバート・スミス(キュアー)、ソニック・ユース、ルー・リード、ビリー・コーガンという顔ぶれで、ルー・リードのような戦友から、90年代を代表するアーティストまでと、なんとも豪華だ。もちろんみなボウイをリスペクトしていて、それがボウイが成し遂げてきた仕事の意味を物語っている。
フーファイは、ドラマーがまだテイラー・ホーキンスではなく、初代の人だった。フランク・ブラックがピクシーズを再結成させるのは、この7年後だ。ロック界随一のおしどり夫婦と思われていたサーストン・ムーアとキム・ゴードンがこの10数年後に別れてしまうなど、いったい誰が予測できただろうか。
そしてふたつめは、このライヴが当時の新譜『Earthling』のリリースパーティーになっていることだ。セットリストの軸はこの新譜で、合間にキャリアを彩る佳曲を盛り込み、ゲストと共演するという構成になっている。『Earthling』はデジタル色が濃いテクノ調の作風だが、ボウイが時代と向き合い自分の中に取り込んだ、渾身の一作だった。
つまりこのライヴは、単にボウイのキャリアを振り返って称えるという懐古的なものではなく、第一線に立って勝負を仕掛けようとする、ボウイの姿勢を表していたのだ。オープニングの『Little Wonder』でボウイがバンドと共にステージに姿を見せたその瞬間、お祭りモードは吹き飛ばされ、場内の空気は一瞬で引き締まった。
豪華ゲストを動員したライヴといえば、92年に同じくマジソン・スクエア・ガーデンで行われたボブ・ディラン30周年コンサートがあるが、当時のディランは居心地悪くするくらいで、現在進行形の自身を提示するまでには至らなかった(ディランはこのときルーツ確認モードだったが、その時期を経て97年に傑作『Time Out Of Mind』を発表する)。
このコンサートから16年後の2013年、ボウイは実に10年ぶりとなる新譜『The Next Day』をリリース。全英1位、全米2位、オリコン10位という、商業的に上出来すぎる滑り出しを見せたが、それよりも世の中に与えたインパクトの大きさにワタシたちは驚愕させられている。この人は、時代との距離の取り方が絶妙なのだと思う。そして今年、69歳の誕生日には新譜『Blackstar』を発表。その2日後に「スターマン」になってしまった。
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