インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌 (2014年)
1961年のニューヨーク、グリニッジビレッジ。ライヴハウスで歌うフォークシンガーのルーウィン・デイヴィスは、アルバムが売れずに金銭に苦しく、住む家もなく知人宅を転々とする日々。女友達には妊娠を告げられ、知人の猫には振り回される。プロデューサーに会いに行くためにシカゴに向かうドライブの車中では、同乗したジャズミュージシャンとそりが合わない。そのプロデューサーからは「ヘタではないが、金の匂いはしない」と本質を突かれ、ミュージシャンを諦めて前職の船員に戻ろうとする。しかし、未納だった会費を支払った後に免許証を紛失していることがわかる・・・。
サクセスストーリーどころか、やることなすこと何もかもうまくいかないル-ウィン。それでも、自身のシンガーとしてのポリシーは曲げない。その不器用さゆえ、周囲とぶつかることも少なくない。ルーウィンには、心を許せる友人は果たしていただろうか。
しかし、この作品がダメ男の挫折劇と言い切れないのは、ルーウィンを演じるオスカー・アイザックの、魂からにじみ出たような名演による。ルーウィンの弾き語りシーンは、吹き替えなしでこの人が歌い演奏したとのことで、その場面は際立って素晴らしい。脇を固めるのは、女友達ジーンにキャリー・マリガン(『ウォール・ストリート』でシャイア・ラブーフの恋人役)、ジーンの恋人ジムにジャスティン・ティンバーレイク、ジャズミュージシャンにジョン・グッドマン、その弟子でドライブに同乗するジョニーにギャレット・ヘドランド(『トロン:レガシー』で主人公のサム)だ。
ライヴハウスでのルーウィンの弾き語りシーンは冒頭とラストになっていて、ラストを観たときに冒頭の場面につながっていくのだと、観る側は知らされる。ただしラストではルーウィンのライヴの後も描かれていて、入れ替わりにステージで歌っていたのは、若き日のボブ・ディラン(らしき男)だった。
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