バグダッド・カフェ(1987年)
ドイツのローゼンハイムからアメリカ旅行に来ていた太った中年女ヤスミンは、夫と喧嘩して車を降りてしまう。ヤスミンはやっとのことで「バグダッド・カフェ」という寂れたカフェにたどり着き、そのモーテルに宿泊する。
いつも不機嫌な女主人ブレンダ、じゃじゃ馬娘や赤ん坊の面倒を見ない息子、昼寝ばかりしているバーテン、自称元ハリウッド俳優の画家、女刺青師など、店員も客もくせ者ばかり。ヤスミンはモーテルの掃除をするが、それがブレンダの気に障ってしまう。しかし子供たちはヤスミンになつくようになり、また彼女が披露するマジック目当てに客入りがよくなって、2人の間には奇妙な友情が芽生えるようになる。
この雰囲気や世界観を楽しめるか、楽しめないか。楽しめる人は得だし、楽しめない人はもったいない。セリフは最小限だが(特に前半は)、これは、観る側に解釈を委ねているのだと思う。
確かに、不明なところは少なくない。ヤスミンが夫と喧嘩した原因はわからないし、カフェやモーテルはお世辞にも流行っているとは言えず、ここの人たちはどうやって生活しているのかと思う。しかし、こんなツッコミは野暮だ。
終盤、ヤスミンがカフェでマジックを披露する場面は歓喜に満ち、それまでの気だるく殺伐とした空気が、まるでうそのように思えてしまう。いや、それまでの煮えきらないだらだらとした空気の連続があったからこそ、この大逆転に魅了されてしまうのだ。
監督も俳優も、知らない人ばかり。いや、かろうじてひとりいた。自称元ハリウッド俳優の男を演じていたのは、ジャック・パランス。ワタシが観た中だと、ティム・バートン版『バットマン』で、ジャック・ニコルソンのネイピアが属するマフィアのボス役を演じていた。
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