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イミテーションゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(ネタバレあり)

イミテーションゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

1951年。数学者アラン・チューリングの自宅が荒らされた。アランは警察の取り調べを受ける中、第二次大戦中にブーで働いていた頃を振り返る。

1939年。イギリスは、ドイツの暗号機エニグマを解読するチームを結成する。しかしアランはメンバーと行動を共にせず、ひとりで暗号解読装置の設計に没頭する。アランは新たなメンバーにジョーン・クラークを招き入れ、ジョーンの助言もあって他のメンバーと少しずつ交流を持つ。

1927年。寄宿学校に通う若きアランは、成績は優秀だがいじめにあっていた。アランに手を差し伸べたのがクリストファーで、2人は心を通わせ、アランは暗号を解く面白さを知る。やがてアランはクリストファーに特別な感情を持つようになるが、校長に呼び出されたアランはクリストファーが結核で死んだと聞かされる。

物語は、3つの時間軸を行ったり来たりする形で進行する。軸になっているのは、1939年からの大戦中の時期にて描かれる、エニグマの暗号を如何にして解読するか、だ。一方で寄宿学校時代にアラン自身のある感情が作られ、戦後警察で取り調べを受ける中でそれが表に出てしまう。アランは同姓愛者であり、当時のイギリスでは処罰の対象だった。

同姓愛に関わる描写は、物語を重苦しくし観る側を切ない気持ちに追いこんでしまう。劇中では触れられていないが、クリストファーが結核であることを匂わせる描写はなかったし、家族が不在の間に自宅で亡くなっている。彼はアランとの関係に苦しみ、整理することができずに自殺したのだと思う。そしてアランは、暗号解読機にクリストファーと名付けていた。

個人的に圧巻だったのは、エニグマ解読に挑むアランやジョーンたちだ。軍に費用捻出を渋られると、チャーチル首相に直訴して予算を得る。しかしなかなか解読には至らず、一時は装置を破壊されそうになる。それを守ったのが、それまでアランとはぎくしゃくしていたはずの、ほかのメンバーたちだった。

ある女性職員が何気なく言ったことばをヒントにし、エニグマ解読に成功はする。しかしアランたちは、解読した事実を軍には伏せる決断をする。イギリス軍が解読していることを、ドイツ軍に気づかれないためだった。敵を欺くためにまず味方を、ではあるが、それは自軍の犠牲に目をつぶることでもあった。解読メンバーのひとりは、兄が戦地に赴いていた。

アランを、ジョーンを。カンバーバッチは『スター・トレック イントゥ・ダークネス』のカーンといい、『SHERLOCK』のといい、ある能力に卓越する一方で精神的に偏っている役柄が多く、そしてそれを表現するのがうまい。キーラ・ナイトレイの役ジョーンは、不器用なアランと現実世界とをつなぐ役割だ。

個人的にものすごく惹かれたのが、MI6つまりスパイのメンシーズだ。誰の敵にも、誰の味方にもならない。アランがチャーチルに直訴する手紙を預かったのもこの人だが、一方でジョーンにソ連からのスパイ容疑がかかると装い、アランにメンバーのひとりがスパイとしゃべらせる。更に、メンシーズはその男がスパイともともと知っていて泳がせていて、イギリスの情報をソ連に流していた。イギリスをスパイしているその男は、自分が利用されていることに気づいていない。

アクションやエンターテイメントの要素を強くするためもあるのか、映画に出てくるスパイは、銃を撃ちまくり腕力が強く女にもモテるヒーロー、というイメージが強すぎる。しかし、ほんとうのスパイとはメンシーズのような人ではないだろうか。演じているのはで、『シャーロック・ホームズ』のブラックウッド卿、『記憶探偵と鍵のかかった少女』の主人公ジョンなどを演じている。

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