ジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)オーチャードホール東京最終公演 #JacksonBrowne
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Jackson Browne イーグルス, グレン・フライ
約5年ぶりとなる、ジャクソン・ブラウン来日公演。この日は東京3公演目かつ通算4公演目にあたり、この後大阪や広島に行くことから、折り返しにもあたる。公演は、途中休憩をはさむ2部構成だ。
【第一部】
定刻を3分ほど過ぎたところで、客電が落ちる。真っ先に登場したのがジャクソン・ブラウンその人で、続いてバンドメンバー登場。『The Barricades Of Heaven』でスタートだ。ジャクソンの声だが、高い音が出なくなっていて、また時折少しかすれた。さすがに年齢を隠せないとも思ったが、許容範囲だ。
ジャクソンはステージ中央に立ち、セミアコを弾きながら歌う。バンドは、向かって左から右に、キーボード、ドラム、ラップスティール、ギターという編成。プレイは間奏やエンディングでラップスティールとギターとの掛け合いになり、続いてキーボードがフィーチャーされた。出だしにして約10分にも及ぶ、スケール感に満ちた演奏となった。
ファーストからの、『Something Fire』。イントロが『These Days』にそっくりな、新譜からの『The Long Way Around』。と、1曲1曲を丹念に演奏。そしてジャクソンは、ほぼ1曲毎にギターを交換していた。ステージはセットらしいセットもないシンプルなものだが、ライティングがとてもきれいだった。高齢の
ジャクソンは、今回のバンドを歴代最高と絶賛している。演奏では彼らの見せ場も多く(特に大柄のギタリスト)、シンガーソングライターのジャクソンというより、自らも一員になってのバンド演奏という様相だ。また曲によっては、2人の黒人コーラスも加わった。個人的には、ドラムビートの存在感の大きさがポイントになっている気がした。
この人のライヴといえば、恒例なのが客席からのリクエストに応じてセットリストが書き換わってしまうことだ。この日も客席からいろいろな曲名が連呼され、ジャクソンは可能な限り応えてくれた。第一部では、新譜からの『Walls And Doors』、セカンド『For Everyman』からの『Redneck Friend』と、バラエティに富んでいた。
前日までは第二部で披露していた、『I'm Alive』。ワタシがはじめてこの人のライヴを観たのは94年の東京厚生年金会館で、この曲をタイトルとするアルバムに伴うツアーだった。それから21年。ジャクソン自身66歳、客層もかなり高めで、ワタシのファン歴などまだまだ浅い方かもしれない。それでも、20年以上この人を見続けていられることに、感慨深いものがあった。
【第二部】
『The Pretender』からの、『Your Bright Baby Blues』でスタート。過去、6回この人のライヴを観てきているワタシにとっても、この曲をナマで観るのははじめてかもしれない。
この後もジャクソンはリクエストに応え、『Jamaica Say You Will』『Late For The Sky』という、セットリスト固定にならないのが不思議な名曲を披露。前者はこの人の原点のような曲で、初期の曲を封印するアーティストも少なくない中、今でも披露できるのはすごいと思った。後者は、終わったときの場内の喝采ぶりがすごかった。
そして、第二部こそは新譜『Standing In The Breach』タイムだ。6年ぶりにリリースされたアルバムが、この人が過去の実績に依存しているのではなく、未だ現在進行形であることを立証してくれる。『If I Could Be Anywhere』は、本編ラストに演奏されてもおかしくない密度の濃い曲だ。タイトル曲のときは、キーが合わず歌い出した直後に自分で取り止め、やり直していた。ある意味貴重な場面かも。
ロックチューンの『Looking East』ではギアが一段入り、ショウが終盤に差し掛かったことを思わせてくれた。ファーストからの『Doctor My Eyes』の軽快なメロディーが、更にダメを押した。
ここまで客席はほぼ全員が座っていたのだが、この曲が終わったときにほぼ総立ちになった。ワタシの付近の紳士は、足が悪いらしく杖を持たれていたのだが、その人も可能な限り立って歓声を発していた。ジャクソンはすごいが、筋金入りのファンのすごさとすばらしさも、目の当たりにした。
さて、この後がワタシにとっての「問題」だった。前日のセットリストをネットで観ていて、絶対に落ちることがないと思われていた名曲『The Pretender』が演奏されなかったのだ。さて、この日はどうか・・・?と構えていたところ、緩いイントロで演奏が始まった。『The Pretender』か・・・、いや、違う。『Running On Empty』だ!
『The Pretender』が落ちたショックをかき消してあまりある、今風に言えば「神対応」のイントロだった。2004年のソロアコースティックは別にしても、これまで観てきたライヴでは、切々と歌う『The Pretender』から電撃のドラムのイントロで『Running On Empty』へとシフトし、その瞬間こそがライヴの絶頂になっていた。
ゆっくり、じわじわと攻め立てるようなイントロを経て、ジャクソンは歌い出した。その姿は、凛々しかった。これまで何10年もイントロで圧倒してきたであろう『Running On Empty』を、別のスタイルもあるんだよと、ジャクソンは提示してきた。ワタシが「問題視」していた瞬間は、問題どころか歓喜の瞬間に塗り変わった。
【アンコール】
ジャクソンが曲を書き、イーグルスのグレン・フライが詞を書いた、『Take It Easy』でスタート。軽快な曲調を軽快なままにとどめず、メドレー式に『Our Lady Of The Well』へとつないだ。
終盤では、バンドメンバーひとりひとりにソロパートがあった。これまで目立ちまくっていたギターやラップスティールだけでなく、キーボード、ベース、2人の女性コーラスも、見せ場を作った。個人的には、これまで全く目立っていなかったベーシストにスポットが当たったことが、嬉しかった。
ダブルアンコールとなり、ショウを締め括ったのは『I Am A Patriot』だった。この人のツアーではお馴染みだが、今回の日本公演では初出。日替わりセットリストの徹底ぶりがすごいと思うし、レゲエ調の曲に過激な歌詞、と、最後の最後までこの人は攻めていたのだ。
【セットリスト】
1st Set
The Barricades Of Heaven
Something Fine
The Long Way Around
Leaving Winslow
These Days
Redneck Friend
Walls And Doors
I'm Alive
You Know The Night
For A Dancer
2nd Set
Your Bright Baby Blues
Jamaica Say You Will
If I Could Be Anywhere
Late For The Sky
Which Side?
Standing In The Breach
Looking East
The Birds Of St. Marks
The Late Show
Doctor My Eyes
Running On Empty
Encore:
Take It Easy
Our Lady Of The Well
2nd Encore:
I Am A Patriot
【公演が終わって】
個人的には5年前の来日に行けなかったので、2008年11月の人見記念講堂以来、6年半ぶりのライヴになった。そして感じたのは、この人は今だ現役であり、変化と進化を続けているということだ。
その最たるは、上記の通り『Running On Empty』の導入部だったが、アンコールも、定番だった『Stay』『Load Out』を、今回ははずしている。これらはいい意味での裏切りであり、かつベテランになればなるほどやりにくいアプローチだ。客が待っている、望んでいる定番に、そのまま応えるベテランアーティストが、大半だと思う。
バンドの充実ぶりはすばらしい。特に、何度もフィーチャーされていたギタリストと、ラップスティールやペダルスティールを巧みに使いこなしていた人のふたりは、際立っていた。ジャクソンはバックバンドを率いるシンガーというより、バンドをまとめるプロデューサーのようにも見える瞬間があった。
この人の年齢を考えると、今後活動自体は続くとしても、ツアーの規模は縮小され、日本に来てライヴが行われるのは、今回が最後になるかもしれないと思っていた。公演前までは。しかし今思うのは、最後どころか、この人はまだまだやれるし、また日本に来てくれるはずだ。
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