ビッグ・アイズ(ネタバレあり)
1958年。娘を連れ、夫から逃げ出した画家志望のマーガレットは、同じく絵を描くウォルターと知り合い結婚。マーガレットの書く大きな目の少女の絵はやがて話題になるが、ウォルターは自分が描いたと言って売りさばく。
一家は富を得るが、マーガレットはほんとうは自分の作品であることをオープンにしたいと何度もウォルターに訴える。その都度言いくるめられて反論できず、仕方なく自宅のアトリエにこもって絵を書き続ける。世間ばかりか、娘にまでウソをついている後ろめたさを抱えてしまう。
実在する女性画家、マーガレット・キーンの伝記映画だ。1950年代後半から約10年間を描き、女性の社会進出がまだまだ困難な時代であっただろうことを思わせる。真実を公表したいマーガレットに、女流画家の名前では絵は売れないと平然と言い放つウォルター。当時の風潮として、あながちはずれてはいなかったのかもしれない。
終盤、マーガレットは娘を連れてカリフォルニアの家を飛び出し、ハワイに落ち着く。名誉毀損でウォルターを訴え、2人は法廷で対決する。裁判長は法廷の場で2人に大きな目の少女の絵を書くよう指示し、これで勝負あった。マーガレットはもちろん余裕だが、ウォルターはこの期に及んで肩が痛くて書けないなどと言う始末。哀れだ。
監督はティム・バートンなのだが、この人らしい摩訶不思議で非現実な描写がほとんどない。強いて言えば、マーガレットがスーパーで買い物をするとき、女性客や女性のレジ打ちなどが、みなビッグアイズのメークをしていて、異様な雰囲気が漂っていた場面くらいだ。ティム・バートンは、マーガレットの魅力を最大限に引き出すことを最優先したのではないだろうか。
マーガレットを演じたのは、エイミー・アダムス。個人的には、『ザ・ファイター』『マン・オブ・スティール』『アメリカン・ハッスル』『her』などで彼女を観てきたが、今回の役は抜きん出ていて、彼女の代表作になると思う。
ウォルターは自分が描いたと生涯訴え続けて2000年に亡くなったそうだ。そしてマーガレットは、87歳にして今もなお毎日絵を書いているそう。エンドロールのとき、本人と役の格好をしたエイミー・アダムスが並んでいるフォトがあって、とても素敵だった。
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