竹内まりや@日本武道館 2014年12月21日
グッズ購入時にはチケットを見せる必要があり、入場時にはチケットと身分証明書を見せる必要があり、と、転売防止の徹底ぶりがすごかった。
定刻を10分ほど過ぎたところで客電が落ち、SashaによるMCを経て、バンドとまりやその人がステージに姿を見せた。『アンフィシアターの夜』から4曲は、ライヴアルバム『Souvenir』まんまだ。この出だしが、この人のライヴの基本フォーマットなのだろう。
ステージは、前方中央にまりや。濃いブルーのスーツ姿で、細身の体が一層強調されている。前方向かって右にはピアノの難波弘之、左には夫であり盟友でありバンマスでもある山下達郎が構え、2人は飛車角のように「王将」まりやを支えている。後方は扇形のひな壇になっており、向かって右から男1女2のコーラス隊、ベース、ドラム、サックス、ギター佐橋佳幸が陣取っている。彼らはみな山下達郎のツアーバンドのメンバーだ。ワタシがまりやのライヴを観るのは4年前の武道館以来だが、はて4年前はサックスいたかなあ。
バンドはフルメンバーを基本としつつも、曲によりメンバー構成がフレキシブルに変わる。まりや、達郎、佐橋、サックスの4人編成にて、デビュー時の『戻っておいで私の時間』『ドリームオブユー』を。この2曲は、加藤和彦に提供された曲だそうだ。続いても初期の『五線紙』で、前後のMCからして、彼女のデビュー35周年や33年ぶりの全国ツアーにあたる今回、キャリアを総括するような構成のようだ。
新譜『TRAD』からの『たそがれダイアリー』は、終盤がサックスソロをフィーチャーし達郎のギターがフォローする形になり、この間まりやは袖に捌ける。そして、次の曲のイントロ中に、チェックのベスト姿に衣装替えしたまりやがステージに生還する。
中森明菜に提供した『OH NO,OH YES』は、自身のライヴで歌うのは今回がはじめてだそうだ。続く『元気を出して』は、もともとは薬師丸ひろ子のために書いた曲のセルフカヴァーだが、根強い人気があるとのこと。ワタシにとっても、最も好きな彼女の曲になる。出産から育児の時期に曲提供のオファーを受けるようになり、シンガーソングライターとしてだけでなく、作家としての道を切り開くことができて、それが今の自分の一部になっている、といったようなことも言っていた。
テレビドラマやCMでお馴染みの『ウイスキーが、お好きでしょ』『告白』『シングルアゲイン』『駅』といったところは、この人のというより、今やJ-Popのスタンダードではないだろうか。バンドメンバーもひとりひとり丁寧に紹介し、それぞれの経歴や宣伝もちゃっかり、でもユーモアも組み込んでくるまりやは、夫達郎に劣らぬMC巧者だ。
サックスの人は達郎が2年前に宮崎でスカウトし東京に移住させた期待のホープで、この人のソロがフィーチャーされたのは1度や2度ではない。それはまたまりやの衣装チェンジタイムにもなっていて、次はロングドレス姿になっていた。男性コーラスの人が、元スターダスト・レビューだと知って驚いた。佐橋佳幸は、日本を代表するセッションギタリストのひとりにして、松たか子の夫でもある。が、こと竹内まりやのライヴにおいては、永遠にまりやの後輩であり、まりやにいじられるキャラクターのようだ。いじりいじられ、も、お互いの信頼関係あってこそと思うけど。
いよいよ終盤。『プラスティック・ラヴ』では、なんと達郎がワンコーラスを歌った。『静かな伝説』では、レコーディングにはサザンの桑田佳祐と原由子夫妻も参加していた曲。本編ラストは、4年前もそうだったように『人生の扉』だった。
アンコールももりだくさんだ。コーラス隊とのクリスマスソング『すてきなホリデイ』を経ての、『不思議なピーチパイ』『September』『J-BOY』。この3曲は、アンコールにおけるライヴの基本フォーマットになる。まりやは胸元「M」とあるセーターにジーンズという、カジュアルな衣装になっていた。
セカンドアンコールは、コーラス隊プラス達郎による『リンダ』。達郎はヴォイスパーカッションを担った。アン・ルイスのために書いた曲にして、はじめて人のために書いた曲でもあるそうだ。そして達郎と2人だけでのデュエットで『Let It Be Me』。オーラスは、まりやひとりだけとなり、ピアノ弾き語りでの『いのちの歌』だった。この曲は『TRAD』のラストナンバーで、つまり竹内まりやの「現在位置」にあたるのだと思う。
1.アンフィシアターの夜
2.家に帰ろう
3.マージービートで唄わせて
4.Forever Friends
5.戻っておいで私の時間
6.ドリームオブユー
7.五線紙
8.たそがれダイアリー
9.OH NO,OH YES
10.元気を出して
11.ウイスキーが、お好きでしょ
12.幸せのものさし
13.告白
14.シングルアゲイン
15.象牙海岸
16.駅
17.プラスティック・ラヴ
18.Sweetest Music
19.静かな伝説
20.人生の扉
アンコール
21.すてきなホリデイ
22.不思議なピーチパイ
23.September
24.J-BOY
25.リンダ
26.Let It Be Me
27.いのちの歌
実は、この日竹内まりや本人の喉の調子が万全とは言えず、歌にせよMCにせよ、ところどころ声がかすれ、裏返っていた。しかし、それでも公演をやり切ったことの方を、ワタシは評価する。歳のことを言っては、と思っていたが、MCでは何度も自分の年齢である59歳を言っていて、それはつまり、現在の自分を受け入れ、それでもなおかつ前に進まんとする、彼女の強い意志の表れだろう。夫である山下達郎の活動が優先されるのが常とのことだが、ツアーでなくとも、シングルや曲提供などで、彼女はまた新しい便りを贈ってくれると思っている。
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