ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)@東京ドーム 2014年3月4日
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最終更新日:2024/09/15
ライヴ エリック・クラプトン, キース・リチャーズ, ジェフ・ベック, ミック・ジャガー, ローリング・ストーンズ
もちろんプロ中のプロなのだから、それ相応のライヴをするとは思っていた。ただ、個人的には10回以上観ていて、驚きや感動はしないかもしれない、いやしなかったとしても、観られればそれでOKと思っていた。ところが・・・。
18時30分開演だが、それから25分ほどが経ったところで照明が落ちた。サンバ調のSEが少しの間流れ、さてオープニングは・・・と構えていると、『Start Me Up』の電撃のイントロが。そしてステージが明るくなり、メンバーの姿が確認できるようになった。
ステージセットは、今回はかなりシンプル。日輪のような円形のアーチがあしらわれ、スタンド席から見る限り奥行きはあまりないように見えた。スクリーンは両サイドに設置されているほか、バックドロップも巨大スクリーンになっている。花道は左右に伸びているほか、正面から客席に向かって突き出していた。この正面花道周辺の席が、ゴールデンサークルと名付けられた8万円の席だ。
曲は、90年代以降では数少ないスタンダードナンバー『You Got Me Rocking』。そして、『It's Only Rock ‘N' Roll』『Tumbling Dice』と続く。その次が、なんと『Angie』。人気のあるバラード曲だが、個人的にはあまり興味のない曲「だった」。過去形にしたのは、この局面に来てストーンズがこう攻めてきたことに不意を打たれ、まさかの感激を覚えてしまったからだ。
ミック・ジャガー(以下ミック)がギターを弾きながら歌った新曲『Doom And Gloom』を経て、ネット投票曲のコーナーに。選ばれたのは『Silver Train』で、ここでミック・テイラー(以下テイラー)登場。ミックの後方にキース・リチャーズ、ロン・ウッド、そしてテイラーの3人が並んでいる。こんなショットが見られるなんて(しかもレア曲で)、夢のようだ。
そして『Honky Tonk Women』だ。キースが右手だけで弾くイントロは、シンプルなのにとてもカッコいい。まだ前半なのに、もうホンキー・トンクなのかと、この辺りから冷静でいられなくなってきた。
メンバー紹介を経て、キースコーナーへ。『Slipping Away』ではテイラーが登場。定番『Happy』は問答無用の盛り上がりを見せた。メンバーの中で、最も若い頃の面影がなくなっている(つまり老けた)のがキースだが、この日はブルーのスタジャン姿で登場し、センスのよさを感じさせる。
ミックがブルースハープを吹き、テイラーも加わる『Midnight Rambler』は、ストーンズのライヴバンドとしての力量の見せどころだ。注目はやはりテイラーで、器用に立ち回るロニーや唯一無二のスタイルを確立しているキースと異なり、この人は今なおギターの腕だけで勝負ができる。ジェフ・ベックやエリック・クラプトンの系統にある人なのだ。ミックとの絡みもあって、よもやの「ダブルミック」が実現だ。
『Miss You』では中盤のボビー・キーズのサックスソロが見せ場となり、ベースのダリル・ジョーンズのソロもあった。『Gimme Shelter』ではコーラスのリサ・フィッシャーがドームを支配し、『Sympathy For The Devil』ではチャック・リーヴェルのキーボードが絶妙のイントロになっていた。いずれもストーンズのツアーではお馴染みの面々で、彼らの貢献度の高さも見逃せない。
キースとロニーは、ほぼ1曲毎にギターを交換していた。ソロはロニーが多く、キメのリフはキースが大半を担っていた。チャーリーのドラムは、リズムキープだけでなく時にパワフルでもあった。この人は感情を表に出すことなく淡々とプレイしているが、その存在感は実は絶大だ。
ミックは、現在70歳にして、もうすぐひいおじいちゃんになるとは到底信じがたい運動量だ。中央と両サイドの花道に何度も足を運び、上部のカメラにも気を配る。スクリーンに映るその顔はしわくちゃなのだが、黒い衣装をまとう体形はまあスリムで、誉め言葉として「化け物」と呼びたいくらいだ。
そして、そのミックがロックパフォーマーとしての限界値を更新したのが、本編ラストの『Brown Sugar』だ。間奏のボビーのソロのとき、ステージ向かって右の花道から左の花道まで一気に走り抜け、その後歌い続けたのだ。ミックがダッシュすると聞いてはいたが、ワタシは曲の中間とは思わず、歌い終えた後に延々と繰り広げられるアウトロでだろうと思っていた。なんて人だ。
あまりインターバルを取ることなくアンコールとなるのだが、歌い出しは日本人コーラス団によるものだ。ステージの左右に12人くらいずつの男女が陣取り、荘厳なメロディーを見事にやりきった。そしてティム・リースのホルンとなり、『You Can't Always Get What You Want』に。終盤はミックが花道にてシンガロングを煽り、ざわついていた場内も、サビを合唱してみせた。
オーラスは、もちろん『Satisfaction』。ここでまたテイラーが加わり、メンバーが持てる最後の力を結集して歌い演奏している。全てが終わると、恒例のメンバー全員が横一列に並んでの礼。キースはここで、頭、胸、下腹部を両腕でコツコツやる恒例のポーズをやっていた(メンバー紹介の際このポーズがなかったので、ん?と思った。単に忘れていただけなのかも)。この後はサポートが捌けてメンバーだけでの礼なのだが、ここにテイラーが加わって5人になっていたのが嬉しかった。
SET LIST
Start Me Up
You Got Me Rocking
It's Only Rock ‘N' Roll (But I Like It)
Tumbling Dice
Angie
Doom And Gloom
Silver Train (Fan Vote ・ with Mick Taylor)
Honky Tonk Women
Slipping Away (with Keith Richards on lead vocals and Mick Taylor joining on guitar)
Happy (with Keith Richards on lead vocals)
Midnight Rambler (with Mick Taylor)
Miss You
Paint It Black
Gimme Shelter
Jumpin' Jack Flash
Sympathy For The Devil
Brown Sugar
ENCORE
You Can't Always Get What You Want (with the Senzoku Freshman Singers)
(I Can't Get No) Satisfaction (with Mick Taylor)
今やストーンズの「家族」と言ってもいい、サポートメンバーたちの力量。そして、言わずもがなのストーンズの力量。これらがひとつになり、素晴らしいライヴが繰り広げられた。年齢を考えれば、ほんとうに今回こそが最後の来日になってしまうのかもしれないのだが、終末感が漂うことはなく、今まで50年間やり続けてきたライヴを、ちょっとだけ進化させていた。
ワタシにとっては、『Doom And Gloom』『Silver Train』以外はライヴで体験済みの曲ばかりなのだが、1曲1曲がずしりと重く響いた。何度も聴き、観た曲が、同じであって同じではない、まさに今このときの音として鳴っていた。ストーンズが、またしてもやってくれたのだ。
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