エルヴィス・コステロ(Elvis Costello & The Imposters)@EX Theater
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最終更新日:2024/03/09
Elvis Costello エルヴィス・コステロ
定刻を5分ほど過ぎたところで客電が落ち、ステージにセッティングされている巨大ルーレットの外枠が点灯。コステロを含むメンバーが走って登場し、『I Hope You're Happy Now』から『Radio Radio』までをメドレー形式でたて続けにやってしまった。コステロはステージ前方正面に構え、後方中央にドラムのピート・トーマス、向かって左にキーボードのスティーヴ・ナイーヴ、右にベースのデイヴィ・ファラガーが陣取るという具合。向かって左前方にはブースがあって、黒人のダンサーがそこで踊っていた。
さて、今回のツアーは「Spinning Wheel Tour」と題されている。コステロはシルクハットを被りステッキを手にしてナポレオン・ダイナマイトを名乗ると、自らステージを降りてフロアのオーディエンスから選んだ女性客をステージにあげ、「あなたの名前は?」「好きな曲は?」「ルーレットを回してもらえますか?」という日本語のカンペを出して(スーパー・ファリー・アニマルズ方式)、その女性にルーレットを回させた。当たった曲は、『So Like Candy』だった。続くは、ジョセフィーンという金髪美女が連れてきたカップルがルーレットを回し、「GIRL」に当たる。『This Year's Girl』から続けて「GIRL」に因んだ曲を演奏した。なるほど。
『Tokyo Storm Warning』を演奏してくれるのは、日本だからかな。映画「ノッティングヒルの恋人」に使われた『She』を経て、再びコステロはステ-ジを降りたのだが、『God Give Me Strength』を歌いながらフロアをゆっくりと歩いて回った。フロアはオールスタンディングで、だけど混乱になることなく、コステロは無事ステージに生還。ワタシは2階席だったので途中歌声だけ聴こえてコステロの姿が見えないこともあったが、コステロを真正面で観たり触れたりした人がたくさんいたことだろう。
スティーヴ・ナイーヴは電子鍵盤と生ピアノを細かく弾き分け、ピート・トーマスはパワフルなプレイを見せる。この人、こんながっちりした体格だったかなあと再認識。デイヴィ・ファラガーはリズムセクションのみならずコーラスもこなしていた。メドレーやアドリブのインプロヴィゼーションはコステロのライヴでは今や定番と言っていいくらいだが、3人とも曲の終盤になるとコステロとアイコンタクトを取っているのがよく見えた(特に、リズム隊の要とも言えるピートが)。
本編は『Shot With His Own Gun』で締め、アンコールは、『Oliver's Army』『Less Than Zero』、という、個人的に嬉しいところを突いてきた。ギターはコステロのみなのだが、ルーレットでセレクトされた曲に合わせてスタッフにテレキャスターやジャズマスターなどを持ってこさせてはスムーズにチェンジしては弾きまくり。ヴォーカルだけでなく、ギタリスト・コステロの力量まで見せつけている。
バンドスタイルでありながら、『She』『Smile』といった、大人の鑑賞に耐えうる、かつ、コステロのヴォーカリストとしての実力が発揮される曲も演奏されていて、これらが混在したセットリストなのにとっちらかった感じがなく、統一が取れているのはさすが。個人的に極め付けだったのが、名曲『Shipbuilding』。何度もライヴを観させてもらっているけど、この曲を聴けたのはもしかするとはじめてかもしれない。
ここまでで相当な時間演奏していて、さすがにセカンドアンコールはないだろうと思いきや、まだ続きがあった。しかも、終わったかなと思った客参加が、ジョセフィーンがカップルを連れてきて、ステージ向かって右端にあったハンマーを叩くというアトラクションに。この後は『Alison』『I Can't Stand Up For Falling Down』『High Fidelity』『Watching The Detectives』と、最早反則状態(笑)。そしてオーラスは、これも鉄板の『Peace, Love and Understanding』だった。
セットリスト(オフィシャルより頂戴)
Overture
I Hope You're Happy Now
Heart Of The City
Uncomplicated
Mystery Dance
Radio Radio
The Spectacular Spinning Songbook
So Like Candy – Spin 1
Come The Meantimes – IMPROMPTU
“Girl” Jackpot – Spin 2
This Year's Girl
Party Girl
Girls Talk
Tokyo Storm Warning – Spin 3
She – Spin 4
God Give Me Strength – IMPROMPTU
I Want You – Spin 5
Chelsea – IMPROMPTU
Walk Us Uptown – IMPROMPTU
Pump It Up – IMPROMPTU
Interlude
I Still Have That Other Girl
Smile
Shot With His Own Gun
アンコール1
Oliver's Army
Less Than Zero
Cinco Minutos Con Vos
Shipbuilding
Bedlam
Tripwire/Peace Love and Understanding (Ballad)
My New Haunt
アンコール2
Hammer Of Songs – Joker Selected!!!
Everyday I Write the Book
Alison
I Can't Stand Up For Falling Down
High Fidelity
Watching The Detectives
Sugar Won't Work
Peace, Love and Understanding
この日はWOWOWの生中継があり、カメラが入っていた。本編と2度のアンコールがほぼ同じ時間で、計3時間34曲というなんとも凄まじいライヴになり、 さすがにこりゃ途中で打ち切られて後で完全版放送という対応をしてるだろうなと思っていた。。しかし、帰宅途中にネットしていて、ライヴが完全中継されたことを知る。コステロのエモーションに応えた、WOWOWもやるな。
向かって左側のバルコニー席にいた外人は、翌日公演を行うCSSの面々だったように見えた。本編が終わると引き上げていったので、これはアンコールでステージ飛び入りか!?という期待もしたのだが、残念ながらなし。
そんなコステロは、現在59歳。年齢なりの作品を作るようになったが、一方では初期の頃の荒ぶる魂も今なおブレてはいない。ルーレットを客に回させるのも、自ら客席に飛び込んでいくのも、ともすればぐだぐだになってしまう恐れだってあったはず(増してや、ことばの壁がある日本ではなおさら)。しかし、それをやってしまうのは、この人が安住の地に留まらず挑戦を続けていることの証だろうし、ユーモアも交えながらショウとしてうまくまとめあげている力量は、さすがだった。
終演時間は22時40分近くになり、まさかこんなに遅くなるとは思いもしなかったが、満たされた気持ちで会場を後にしたのは、言うまでもないことだ。
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