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ポール・マッカートニー(Paul McCartney)(2)

Paul McCartney『NEW』

現在71歳のポールは、恐らくそのキャリアにおいて何度目かのピークを迎えていると思う。

ヘンな言い回しかもしれないが、ワタシはひと通りもポールも聴いてはいるが、ビートルズの側にはいたくなかった。ビートルズよりもストーンズ、もっと言えばストーンズよりもだ。ビートルズはあまりにも巨大すぎて、あまりにもスタンダードすぎた。マイノリティーイコールかっこよさ、最大公約数的に支持されるところに身を委ねるよりも、少しでも他の人の知らない輝きを自分が先んじて知ることに喜びを感じ、ちっぽけな優越感を覚えていた(ストーンズもツェッペリンも充分巨大だけど)。

今まで、ロック界において先頭をひた走り、道を作り、限界値を更新してきたのは、だったと思う。後期ビートルズがライヴをやめてスタジオレコーディングに没頭し、やがて解散するのを横目に、ストーンズはアルバムをコンスタントにリリースする一方、ライヴも精力的に行ってきた。それはロックアーティストのフォーマットになり、スタンダードとなった。も、も、ストーンズという先人がいたかいないかで、その活動は大きく変わったはずだ。

しかし、去年今年の動向を見るにつけ、ポールとストーンズの立ち位置は逆転してしまったのではと思ってしまう。ストーンズはミック・テイラーらを加えてアニヴァーサリーツアーを行い、新曲も少し作った。もちろん、ここまで転がり続けてきたのはそれはそれで驚異的なことだし、ここで集大成的なツアーをやったことに異論はない。

ポールのアプローチは、集大成ではなく現役だ。デイヴ・グロール&クリス・ノヴォゼリックの元組と共演し、新曲を披露。今年5月からツアーを開始し、ボナルーフェスティバルにヘッドライナーとして出演。8月でいったんブレイクしたものの、新譜『New』をリリースし各地でプロモーションライヴを行い、そして来日だ。ライヴは計39曲で、3時間近くにも渡っている。

ストーンズには、という、同じレベルで刺激しあえる盟友がいるし、チャーリー・ワッツとロン・ウッドもそれに追随している。一方のポールは、信頼できるバンドメンバーを得ているとは思うが、実質的にはほぼひとりで奮闘しているも同じだ。

ひとりだからこそ、外部の人材との共演に積極的なのだろう。ストーンズは、外部のアーティストを結局は自分の側に取り込んでしまうが、ポールの場合は相手に委ねてしまえる柔軟さがある。『New』で4人のプロデューサーを起用していて、こんなの大御所アーティストではまずありえない。ストーンズが来年またツアーを行うという噂が出ているが、これはミックがポールを意識しているところもあるのではないだろうか。

あまりにも精力的すぎるし、クリエイティビティはいまだに枯渇することがない。ポールは異常だ。そして、ポールは超人だ。

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