浜田省吾@横浜アリーナ – ON THE ROAD 2011
結論から言えば、今回も素晴らしいライヴではあったが、ワタシ個人は中盤までは悶々としていた。新作なしなので新曲もなく、もちろんレア曲の披露もあり、浜田がはけてインスト演奏という、面白い試みもあることはあった。が、大きなインパクトにはならなかった。映像も結構駆使されたが、CGはクォリティが高いとは思えず、浜田のキャラクターには合わないと感じた。
がしかし、あの曲にヤラレた。演奏の前、浜田が長いMCを添えた。その曲を書いたのは、今から25年前で浜田が33歳のとき。当時日本はバブル絶頂期に向けて進んでいて、日本人としてのアイデンティティは何かというのを、浜田が自身にも日本人にも問いかけた曲だそうだ。その後、バブル崩壊、9.11同時多発テロ、リーマンショック、そして今年の3.11・・・。恐らくは日本が迎えた戦後最大の危機、だからこそ日本人が立ち上がり、そして乗り越え克服するときだと浜田は言い、歌い始めた。
『J.Boy』だ。
スクリーンには、老若男女の日本人の顔がランダムに流れた。CG映像の何100倍も、説得力があった。この反則とも言える映像の使い方に、2002年のU2のスーパーボウルハーフタイムショウを思い出した。
そして、3.11に自分が目の当たりにしたものが、一瞬のうちに脳裏によみがえってきた。混乱する職場。完全ストップした電車。閉鎖された駅。車道がクルマで埋め尽くされたばかりか、歩道も人で埋まっていた。横浜の自宅に向けて歩き、途中運よくタクシーを拾えるも、ほとんど進まない。なかなかつながらない携帯をだましだまし使ってヨメさんと連絡をとり、それもバッテリー切れで連絡できなくなってしまった。午前2時に帰宅。とっくに寝ているはずのヨメさんは、起きて待っていてくれた。・・・もちろん、家屋を流され家族を亡くされた東北の人たちからすれば、取るに足らないことだろう。しかし、あの光景、あの出来事は、生涯忘れない。
このツアーは、浜田にとって歴代最大の22人のメンバー編成になっていた。ギターやベースなどのバンドを基本編成とし、ホーンセクション3人、バイオリン7人、ヴィオラとチェロ5人が、曲により加わった。そして『J.Boy』では、終盤全員が立ち上がって演奏を繰り広げ、まさにステージ全員の総力をひとつに結集したかのような圧倒的なパフォーマンスを見せた。ライヴでも何度も観ているし、CDでも数限りなく聴いてきた曲だが、この『J.Boy』は圧巻だった。
本編を『愛の世代の前に』で締め、アリーナの中央部を覆っていた黒い幕がはがされる。いよいよ、センターステージのお目見えだ。そして、ステージ向かって右から細い通路が伸びていて、バンドと浜田はココを通ってセンターステージに上がった。
ヘッドフォンマイクをつけ、『光と陰の季節』『I Am A Father』『ラストショー』などを歌う浜田。ステージ上を常にぐるぐると歩き、スタンド席でも臨場感を味わえる。今や恒例のウェーブや、客の年齢調査も実施。ワタシは、浜田のライヴは今回が4度目になるのだが、今回は過去3回からひとつ上の世代になってしまった(歳がバレるかな/笑)。
『ラストダンス』の後、浜田とピアノの人以外は正面ステージに戻り、2人での『家路』。途中からフル編成での演奏へとシフトし、ピアノの人と浜田も正面ステージに生還する。ここでファーストアンコールが終わったが、再び全員で姿を見せ、横一列になって挨拶。そして、オーラスは『日はまた昇る』だった。
現在、浜田省吾は58歳。ラヴソングやメッセージ性を帯びた曲に加え、近年は家族をテーマにした曲が目立つようになってきた。浜田自身も年輪を増やしていることの現れと思うが、にしても若いし、それだけでなく今だチャレンジを続けている。
この日、収録用のカメラが入っていた。来年には、DVDとしてリリースされるかな。
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