*

手塚治虫・現代への問いかけ-ラストに込められたメッセージ

公開日: : 最終更新日:2023/02/09 テレビ特番

手塚治虫『紙の砦』

NHK-BSで、4夜連続での特番が放送。NHKのアナウンサーと、手塚の息子でビジュアリスト手塚眞がナビゲーターとなり、毎回テーマを設けて手塚治虫が作品に込めた想いを解き明かしていくというものだ。

第1夜は、「ラストに込められたメッセージ」。コメンテーターには俳優の船越栄一郎、作家の高橋源一郎、精神科医の香山リカ、マンガ家の萩尾望都が顔を揃えた。それぞれが、手塚との出会いの作品や気になった作品などを挙げ、トークがとめどなく盛り上がった。

列挙された作品は、『鉄腕アトム』『火の鳥』『ブッダ』といったメジャーどころから、初期の作品、晩年の作品と、多岐に渡った。個人的には手塚晩年の傑作である『アドルフに告ぐ』を扱ってくれたのが嬉しかった。また上記の作品でいくと、ワタシは『アトム』は一通り読んだが、『火の鳥』は断片的にしか読んでなく、『ブッダ』に至っては全く読んだことがない。こりゃいかんな。

自身の戦争体験を元に描いた『紙の砦』は、ある意味ショッキングだった。日本における戦争の悲惨さを描いたマンガといえば、『はだしのゲン』が挙がるが、内容的には(番組中で少ししか観ていないとはいえ)それに近い印象を受けた。一握りの権力者が勝手に始めた戦争のために、たくさんの人々が犠牲になり、言いようのない悲しみに包まれているさまが生々しかった。

ラストには、テレビ『鉄腕アトム』の最終回がまるまる流された(原作の『アトム』は明確に完結していない)。このテレビ版では、太陽の温度が上がったことで地球上に人間が住めなくなって人類は移民。地球上にはロボットだけがいる状態に。アトムは太陽の膨張を押さえるためにロケットごと太陽に突っ込んでいる。この状況を仕掛けた男は、体はロボットだが脳は人間だと思い込んでいたのが、実は脳も機械であることが判明。元をただせばロボットを作ったのは人間であって、単なるハッピーエンドではなく、観る側に考えさせる終わり方をしている。

関連記事

漫勉Neo 手塚治虫

NHKEテレで、漫画家が作画しているさまを撮影し、創作の秘密に迫る「漫勉Neo」という番組が

記事を読む

手塚治虫 創作の秘密

1986年に放送された、手塚治虫のマンガ執筆の様子に密着取材した番組が、先日放送されていた。

記事を読む

手塚治虫 漫画 音楽 そして人生

今年は手塚治虫生誕80年にあたるそうで、NHKでは1年間に渡り断続的に特集を組むそうだ。プレ

記事を読む

手塚治虫戦争館

毎年この時期になると、テレビでは戦争関連の特番や映画が放送される。そして、この4月からBSで

記事を読む

わたしの手塚治虫~こころに残る名場面・名セリフ

NHK-BS2では、今年生誕80年を迎える手塚治虫を、1年に渡って特集してきた。4月からはレ

記事を読む

  • 全て開く | 全て閉じる
PAGE TOP ↑