手塚治虫・現代への問いかけ-ラストに込められたメッセージ
NHK-BSで、4夜連続で手塚治虫の特番が放送。NHKのアナウンサーと、手塚の息子でビジュアリスト手塚眞がナビゲーターとなり、毎回テーマを設けて手塚治虫が作品に込めた想いを解き明かしていくというものだ。
第1夜は、「ラストに込められたメッセージ」。コメンテーターには俳優の船越栄一郎、作家の高橋源一郎、精神科医の香山リカ、マンガ家の萩尾望都が顔を揃えた。それぞれが、手塚との出会いの作品や気になった作品などを挙げ、トークがとめどなく盛り上がった。
列挙された作品は、『鉄腕アトム』『火の鳥』『ブッダ』といったメジャーどころから、初期の作品、晩年の作品と、多岐に渡った。個人的には手塚晩年の傑作である『アドルフに告ぐ』を扱ってくれたのが嬉しかった。また上記の作品でいくと、ワタシは『アトム』は一通り読んだが、『火の鳥』は断片的にしか読んでなく、『ブッダ』に至っては全く読んだことがない。こりゃいかんな。
自身の戦争体験を元に描いた『紙の砦』は、ある意味ショッキングだった。日本における戦争の悲惨さを描いたマンガといえば、『はだしのゲン』が挙がるが、内容的には(番組中で少ししか観ていないとはいえ)それに近い印象を受けた。一握りの権力者が勝手に始めた戦争のために、たくさんの人々が犠牲になり、言いようのない悲しみに包まれているさまが生々しかった。
ラストには、テレビ『鉄腕アトム』の最終回がまるまる流された(原作の『アトム』は明確に完結していない)。このテレビ版では、太陽の温度が上がったことで地球上に人間が住めなくなって人類は移民。地球上にはロボットだけがいる状態に。アトムは太陽の膨張を押さえるためにロケットごと太陽に突っ込んでいる。この状況を仕掛けた男は、体はロボットだが脳は人間だと思い込んでいたのが、実は脳も機械であることが判明。元をただせばロボットを作ったのは人間であって、単なるハッピーエンドではなく、観る側に考えさせる終わり方をしている。
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