男組@BSマンガ夜話
公開日:
:
最終更新日:2023/08/27
池上遼一
BSマンガ夜話で、なんと『男組』が扱われていた。マンガ夜話は不定期に放送され、扱う作品も年代やジャンルに偏ることなくピックアップされているのだが、『男組』は最も扱われにくい作品ではないかと、勝手に思い込んでいた。『男組』は『美味しんぼ』の雁屋哲が原作、池上遼一が作画を担当しているのだが、番組中では大半を池上の絵について語ることとなり、後はストーリーや設定について適度に揚げ足を取りながら面白おかしくやっていた。
ワタシがマンガを最も夢中になって読んだのは、小学生から高校生のときだと思う。当時はまさに少年ジャンプ隆盛だった。社会人になってからは、まんまと出版社の術中にハマっているとわかりつつ、気に入ったマンガを愛蔵版や文庫版で求めるようになっていた。
『男組』は少年サンデーに連載されていて、ワタシはかろうじて末期だけリアルタイムで読むことができた。その後単行本全25巻を立ち読みして全貌を知るのだが、その内容はおよそ当時のサンデーに連載されていたのが信じられない(『うる星やつら』も連載中だった)、クソ真面目なマンガだった。まず目を惹くのがやはり池上のペンによる劇画タッチの絵で、ワタシが勝手に思う日本で最も上手いマンガの絵である。
ストーリーも見事で、関東の高校を暴力で制圧しようとする神竜剛次に対し、父親殺しの刑で刑務所に入っていた流全次郎が登場し、2人による対決が繰り広げられる。軍艦島や刑務所での攻防などかなりのスケールで描かれる中、これがただの学園紛争には収まらず、やがて日本の政治を裏から操る影の総理という存在が明らかになり、結局は日本そのものの在り方を問うという方向に向かって行くのだ。
少年サンデーでは、『男組』連載終了の後、『男大空』というマンガが、やはり雁屋・池上コンビで連載されていた。『男組』の後を受けてというのはどうにも分が悪く、キャラクターにせよストーリー展開にせよ、パワーダウンの感はどうしても否めなかった。ただその一方で、『男組』の焼き直しをするのではなく、なんとか別のものを描きたいという作者側の意思は、伝わってきた気がしている。
・・・というわけで、『男組』は、これ以上のモノをマンガには求めないと思わせる、ワタシにとっての最高峰のマンガである。ただし決定的な弱点もあると思っていて、それは男臭すぎて女性向けではないことだ。それと、調べてみたら『男組』は実写映画にもなっていることがわかった。機会があったら、ぜひ観てみたい。
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