ポール・ウェラー(Paul Weller)『As Is Now(アルバム)』
ポール・ウェラーが9月にリリースした新譜『As Is Now』を聴いた。
ネットでサンプルを試聴したり、ラジオで何曲か聴いたりはしていて、その内容はこの人の音楽を長く聴いて来た者にとっては待望であると同時に、まさかの仕上がりになっている。今度の作品には、ジャムやスタイル・カウンシルといったバンド時代を彷彿とさせるリフやフレーズが復活しているのだ。
予兆がないわけではなかった。2001年に行っていたソロアコースティックツアーや、記憶に新しい昨年のロックオデッセイでのステージで、この人はジャムやスタカンの曲を披露している。それは懐メロとしてではなく、今現在のポール・ウェラーの立ち位置を力強く宣言するかのような輝きを放っていて、ただ単に「演奏した」というレベルを超えた、素晴らしいパフォーマンスになったのだ。
こうしたアプローチは、ソロの初期にやっていてもおかしくはなかった。ジャムにせよスタカンにせよ、軸になっていたのがウェラーその人であるのは明白だし、ソロに転じたところで自分の持ち歌としてこれらを披露するのは、むしろありがちなことだ。だけどこの人は、そうはしなかった。キャリア総括ツアーを行った後はバンドにきっちりとけじめをつけて封印し、自らのルーツを再確認しつつソロとしての音作りに励むようになった。バンド時代の栄光に安易にすがりたくはないという、この人なりの挑戦ではなかったのだろうか。それが明確な成果として現れたのは、『Stanley Road』での商業的成功だった。
これ以降のウェラーはよりソウルフルな方向に進んで行き、年齢的にも地味渋の地に収まっていくのかなあと思っていたところへ、この作品だ。ソロとして確固たるキャリアを築き上げてきたところへのダメ押し状態、まさに鬼に金棒状態だ。ノエル・ギャラガーやオーシャン・カラー・シーンを始め、フォロワーの少なくない人だが、今こそこの人の音楽はより多くの人に届けられるべきだと思う。
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