松田優作(1)
このブログをいつまで続けるかはわからないけど、必ず書いておきたい人というのがいた。明日11月6日は、俳優松田優作の命日。亡くなったのが1989年なので、今年が13回忌になる。死してなおその影響力は強く、作品のリバイバルやリイシュー(再発)も後を絶たない。人気は落ちるどころか、ファンは更に増えたのではないかとさえ思えるほどだ。
文学座で役者としての勉強をしながら、映画『狼の紋章』でデビュー。更にはテレビ『太陽にほえろ!』のジーパン刑事役で人気となる。長身と鍛え上げられた肉体、そして獲物を射るかのような鋭い表情から、ある期間はアクション俳優として活躍。しかし通り一遍の役柄に落ち着くことに満足せず、コミカルな演技を織り交ぜることで自ら役を磨いた。転機が訪れたのは、森田芳光との出会い。『家族ゲーム』でもっさりした家庭教師を演じ、これまで縁がなかった映画各賞を受賞。その後は実験作『ア・ホーマンス』で自ら監督を務め、また文芸作品にも挑戦する。
遺作となった映画は、リドリー・スコット監督のハリウッド作品『ブラック・レイン』だ。マイケル・ダクラスと高倉健が主演することはあらかじめ決まっていたが、敵となるヤクザ役がなかなか決まらず、オーディションが開催されることになった。優作はこの役を勝ち取った。萩原健一もこのオーディションを受けたが、優作の子分役しか残っていなかったので、これを断ったというエピソードもある。そして、優作はこのとき既に膀胱ガンに冒されていたが、治療を続けながら撮影に臨んだ。『ブラック・レイン』は、トータルの出来としては娯楽映画の域を出るものではないが、優作が出たシーンだけはどれも鬼気迫るものがあった。
優作はある時期、自分にアクションの役しか来ないことを悩んでいたのだという。拳銃やナイフを手にするのではなく、歯ブラシやコップのような生活感のあるものを手にして演技をしたかったのだそうだ。だけどワタシは、松田優作はやっぱりアクション俳優であったと思う。それもとびきりで、唯一無二の。そして松田優作の代表作だが、それは「なかった」と思う。少なくとも日本では、アクションを一級の演技だとみなさない風潮が作る側にも観る側にもあり、優作が世に受け入れられるには、登場するのが早すぎたのだ。
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