波多野秋子と有島武郎
テレビ東京系で『お宝鑑定団』という番組がある。芸能人ゆかりの品や歴史のある品を視聴者が持ち寄り、どれだけの価値があるのかを鑑定するという番組で、本放送は火曜日の夜なのだが、数年前にオンエアされた分を日曜日のお昼に再放送している。番組のラストにはそれ相当の品が登場し、結構な額として鑑定される。
この日、は芥川龍之介『開化の殺人』の生原稿、徳田秋声の全集に収録されていない作品の原稿、有島武郎のこれも全集に収録されていない作品の原稿が提示された。そしてもうひとつ、有島が雑誌の編集者波多野秋子に宛てた手紙も。有島は大正12年に波多野と心中していて、この手紙はその半年前のものだった。こちらも未発表である。
これらの原稿を持ち込んだ人は、100万円と自己評価。過去番組に出展された幸田露伴や坂口安吾などの原稿は、だいたい60万から70万という鑑定結果だったので、妥当といえば妥当かもしれない。ワタシは芥川の原稿はもっと値打ちがあるだろうと考え、300万と予想してみた。
そして、鑑定結果はなんと1100万となった。思わず場内がどよめく。芥川の原稿がやはり最も高く、これだけで600万。徳田の原稿は200万、有島の原稿と手紙で300万という内訳だった。鑑定者は波多野秋子に宛てた手紙について特に注目したようで、波多野秋子がどんな人だったのかなどについて詳しく解説していた。
有島武郎と波多野秋子といえば、吉永小百合が主演した『華の乱』という映画がある。吉永が与謝野晶子、緒方拳がその夫である鉄幹、松田優作が有島、池上季美子が波多野という配役で、明治後期から大正にかけてのこれらの作家の生きざまを描いている。松田優作は、これが『ブラックレイン』の前に出演した映画作品だった。
筑摩文庫からこの辺りの作家の全集が出ていて、ワタシもある時期必死になって読み耽ったことがある。森鴎外の全集の途中で挫折。いつのまにか音楽雑誌以外の本からは遠ざかってしまったが、また読書を始めてみるのも悪くないと思った。
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