ライド(Ride)Nowhere anniversary show@Liquidroom
1990年にリリースされた、ライドのファーストアルバム『Nowhere』。コロナ禍もあって、欧米でリリース30周年に掛けたツアーが行われたのは昨年、そして今年になって、日本でもそれが実現することになった。
開演時間を2分ほど過ぎたところで客電が落ち、怒号のようなSEが数分流れた後に4人が登場。『Nowhere』全曲演奏は、『Seagull』でスタートだ。ロズ・コルバートのシンバルからスティーヴ・ケラルトのベースリフ、そしてアンディ・ベルのギターリフが何度もリフレインされ、そしてアンディが歌い出す。数あるロックバンドのライヴの出だしにおいて、屈指のカッコよさだと思う。
続いて『Kaleidoscope』となり、まさにアルバム『Nowhere』が曲順もそのままに再構築される。つまりは先の展開が既にわかっている中でライヴを楽しむのが、醍醐味のひとつだ。立ち位置は、フロントにマーク・ガードナー、真後ろにロス、向かって右にスティーヴ、左にアンディという配置だ。マーク以外はTシャツ姿、マークも襟付きシャツ姿で、4人ともカジュアルないでたち。マークはほぼ1曲毎に「アリガトウ」「カンパイ」といったMCを入れ、次の曲を紹介。アンディも時折「thank you」と言ってくれた。
今回のリキッドルームは天井が低く、1000人も入れば満員になる狭いキャパシティで、個人的に何度かライドのライヴを観てきた中でも、最も彼らを近くで観ることができている。マークのヴォーカルは声域がやや高め、アンディは低めだ。アンディもマークも2本のギターを使い分けていたが、前半アンディはほぼ1曲毎に交換し、対照的にマークは1本で弾き切っていた。
マークはメロディー重視のギター、アンディは時にノイジー時に爆音で、ギターへのこだわりはアンディの方が強いように見えた。また、スティーヴとロスのリズム隊も音圧がふたりに負けず劣らずで、マークとアンディの双頭という見方が薄らぐ瞬間が何度もあった。当然だが、この4人のコンビネーションあってのライドなのだ。
演奏そのものは原曲よりもラウドでヘヴィーによっているが、『Seagull』のイントロを除けば意外にも尺は原曲に近かった。なので、テンポよくサクサクと曲が進む感触だった。中盤では『Dreams Burn Down』で場内のヴォルテージがあがり、そしてアンディのリフで始まった『Vapour Trail』はこの日のハイライトになった。名曲だし、当然だ。
ステージには、丸いライトを縦長に並べたセットが6基設置されていた。リキッドクラスのステージでこの装飾があるのは珍しいと思い、そしてその効果は抜群だった。『Vapour Trail』のときは赤いレーザー光線がフロアに向けて発せられて場内を美しく彩り、それがアウトロのリフと見事にシンクロした。
『Here And Now』ではアンディのヴォーカルの合間にハーモニカを吹くのだが、マイクスタンドに固定させて吹きながらギターを弾くという、見たことのないプレイぶりだった。そして終曲の『Nowhere』へとなだれ込むが、この曲だけは終盤の4人のプレイが原曲よりも大きく拡大されていた。
全曲演奏をひと区切りとし、アンコールは『Lannoy Point』で幕開け。ライドが再結成したことを肯定できるアッパーな曲だ。大作『OX4』を経て、マークが「new song」と紹介して始まったのが『Monaco』。美メロの佳曲だが、果たしてこれが次のアルバムの看板曲になるのだろうか。そしてオーラスが、明日の1曲目に演奏されるのが既に決まっている『Leave Them All Behind』だった。
セットリスト
Seagull
Kaleidoscope
In a Different Place
Polar Bear
Dreams Burn Down
Decay
Paralysed
Vapour Trail
Taste
Here and Now
Nowhere
アンコール
Lannoy Point
OX4
Monaco
Leave Them All Behind
ライド側の設定なのか、それとも会場側の設定なのかは不明だが、客出しのSEはデヴィッド・シルヴィアンと坂本龍一の『Forbidden Colours/禁じられた色彩』だった。
90年代の若き彼らを見逃したのは後悔のひとつだが、再結成した彼らを何度か観る機会を得たことで、最早チャラになりつつある。そして、夢は続く。明日はセカンドアルバム『Going Blank Again』のアニヴァーサリーライヴだ。
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