ダニエル・キイス『24人のビリー・ミリガン』
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最終更新日:2021/06/17
ダニエル・キイス
1970年代後半のオハイオ州。3人の女性に対する連続強盗強姦事件が起こり、ビリー・ミリガンが逮捕・起訴される。しかしビリーは、事件のことを何も知らないと言う。弁護士は精神鑑定士を呼んで対応させるが、彼は自分はビリーではないと言い出す。調査の結果、ビリーには23の人格が存在することがわかる。
幼少時の実父の自殺未遂を契機に最初の別人格が現れ、その後義父による虐待の影響で複数の人格が生まれている。基本的にはスポットと呼ばれるポイントに立って意識を持つのは10の人格だが、「好ましくない者」とされる13の人格も存在し、強盗強姦事件は複数の人格が入り乱れる中で起こった。ビリーは無罪となった後精神治療を受けるが、そこで全人格が統合された24番目の人格「教師」が登場する。
作家ダニエル・キイスによる、ノンフィクションになる。つまり実話をもとに書かれていて、ビリー・ミリガンは実在し、事件も実際に起こったものだ。劇中「教師」と対話する「作家」という男は、まさにキイスその人だろう。またこの本により、多重人格が世に認知されるきっかけにもなったらしい。
ワタシが読んでいてユニークだなと思ったのは、人格がたくさんあるのに肉体がひとつしかないことに窮屈さを、彼らが感じていないことだ。時には人格同士で会話し、そしてルールを決めている。「好ましくない者」としてスポットから追放される人格はいても、激しく対立したり言い争ったりすることはまずない。結構、統制はとれている。
キイスの著作『5番目のサリー』のサリーは、もともと彼女の中にあった人格が分裂して他の4つの人格ができあがったとされている。対して、ビリーの方は自身の中に起源を見出だすのが難しい人格もいる。安全なときに統制するリーダー格のアーサーはイギリス人だし、刑務所など危険な場所で身を守る必要があるときにリーダーになるレイゲンは、ユーゴスラビア人。最初の別人格であるクリスティーンは、幼い少女だ。
無罪になった後のビリーは、病院で虐待を受けたり政治家に危険視されるなど厳しい日々が続いたが、長きに渡る精神治療の末解放され、名前を変えて現在も暮らしているそうだ。
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