007 カジノ・ロワイヤル(2006年)
ジェームズ・ボンドは、マダガスカルで武器密造人を監視し、射殺。その男の携帯電話のメッセージ「エリプシス」を確認すると、バハマに飛ぶ。メッセージの送信者ディミトリオスとその妻に接触したボンドは、マイアミ国際空港の大型旅客機が爆破される計画を知る。
ボンドはディミトリオスを殺害し、旅客機の爆破も未然に防ぐ。この計画は、旅客機製造会社の株を空売りして利益を出そうと目論んでいたル・シッフルの仕業だった。投機に失敗して多額の損失を出し、資金源のテロ組織に脅されたル・シッフルは、モンテネグロのカジノで損失を取り戻そうとする。ボンドは国の資金を使って阻止するよう命ぜられ、財務省のヴェスパーが監視役としてボンドにつく。
ボンド役が、ダニエル・クレイグに交代。007シリーズは、ショーン・コネリーとロジャー・ムーアがレガシー的存在で、ティモシー・ダルトンにせよピアース・ブロスナンにせよ、2人のキャラクターをどこか背負っているところがあった。しかしクレイグのボンドは、無口で淡々としていて、過去のボンド像には倣っていない。
位置づけとしては、シリーズの継承というよりリブートに近いのではないだろうか。以前の作品から続いて出演しているのは、Mのジュディ・デンチのみ。Qもマネーペニーも登場しない。冒頭、チェコのプラハにて、MI6の造反者を殺害したジェームズ・ボンドは、殺しのライセンスである007のコードネームを取得。007誕生をさらりと描いている。
ボンドガールのヴェスパーは、エヴァ・グリーン。序盤は冷たく、しかし中盤以降は献身的にボンドの危機を何度か助け、いったんはボンドにMI6を辞職させるまでの存在になる。しかし、彼女もテロ組織から逃れられない事情があり、悲しい最期を迎えてしまう。ボンドに大きな影響を与えた、運命の女性だ。時系列では後に公開される「ダーク・シャドウ」でのぶっ飛んだ役どころを先に観ているので、このキャラクターはかなり意外だった。
アクションを売りにしているシリーズで、勿論本作でもそれはあるのだが、それ以上にカジノ・ロワイヤルでのル・シッフルとボンドの心理戦に見ごたえがある。どちらかが直接的なイカサマをするでもなく(ボンドはル・シッフルの妻に毒入りカクテルを盛られるが)、ボンドはいったんは大負けするも、フェリックス・ライターの資金面でのサポートなどもあり、最後には勝利する。
ル・シッフルはマッツ・ミケルセン、フェリックスはジェフリー・ライト。テロ組織の殺し屋のひとりが、イザック・ド・バンコレだった。他の作品でも観たことのある役者がこのシリーズにでてくれるのは、嬉しい。
主題歌は、クリス・コーネル。ソロ名義だが、時期的にはオーディオスレイヴの後期だったはず。バンドは尻すぼみのようになり、2007年に消滅しているので、ここでの活動はなんだか意味深だ。
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