『インセプション』をIMAXで観た
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最終更新日:2024/10/12
クリストファー・ノーラン IMAX, キリアン・マーフィー, クリストファー・ノーラン, スタンリー・キューブリック, ディストピア, トム・ハーディ, パリ, マイケル・ケイン, レオナルド・ディカプリオ, ロンドン
クリストファー・ノーラン監督の最新作『テネット』公開にリンクした企画として、この人が監督した作品がimaxで上映されている。先月の『ダークナイト』に続き、今度は『インセプション』を観た。
人の夢の中に潜り込んで情報を抜き取るスパイのコブは、妻モルの殺害容疑で追われる身になっていた。大企業トップのサイトーは、容疑の消去と引き換えに、競合相手の企業の次期社長ロバートに事業終結を決意させるアイディアを埋め込む(インセプション)ことをコブに依頼する。
コブは作戦実行の仲間を募り、また恩師にして妻モルの父でもあるマイルス教授を訪ね、夢の設計士としてアリアドネを紹介されてチームに加える。サイトーが航空会社を買収し、ロバートとチーム全員が飛行機のファーストクラスに搭乗して、ロバートの夢に入り込んだ。
オリジナルは2010年公開で、個人的にも劇場で観て以来10年ぶりになる。ストーリーは大半を忘れていて(汗)、序盤に日本の新幹線の中や東京タワーを臨めるビルの屋上などのシーンがあり、こんなのあったかな?と驚いてしまった。コブがマイルスに会うのはパリで、アリアドネの能力を試す場面ではエッフェル塔とセーヌ川が確認できたが、これらも記憶から飛んでいた。
コブたちが特に気を遣っているのが、自分が今いるところが夢か現実かを判別することだ。というのも、かつてモルは夢と現実との区別がつかなくなってしまい、夢から現実に戻ろうとしてビルから身を投げてしまったからだ(仕掛けをしていない場合、夢の中で死ぬと現実に戻る)。モルの幻影は、コブの夢の中に何度となく現れる。
さてIMAX効果だが、映像の色味は原色がより強調されたように感じた。序盤でパリの町並みが隆起して四次元状態になったときの光景や、コブとモルが夢の中の更に夢の中まで深く潜って2人で作り上げた都市は、視覚的に圧巻だ。そして、この作品で当時も今も話題なのは、無重力になったホテルの廊下でのアーサーと追手との攻防だ。CGを使わずセットを組んで人力で回転させていると聞いていて、浮遊感と立体感がより生々しく伝わってきた。
キャストは、コブがレオナルド・ディカプリオ。サイトーが渡辺謙。アリアドネがエレン・ペイジ。そして、ノーランファミリーとでも言うべき面々が大挙集結している。マイルスのマイケル・ケイン、アーサーのジョセフ・ゴードン=レヴィット、ロバートのキリアン・マーフィー、チームのひとりイームスにトム・ハーディ。モルは、マリオン・コティヤールだ。ファミリーに囲まれていながら、既にキャラが確立しているディカプリオを主人公に配し、両者を打ち消すことなくお互いを引き立たせているのはさすがだ。特にジョセフは、本作が俳優として飛躍するきっかけになったはずだ。
計画段階では、夢の実行は3階層までとされていた。しかし、その3階層目でロバートがモルに殺害されてしまい、ロバートを蘇生させるためにアリアドネがもう1階層潜ることを提案し、コブが了承。結果4つの階層での攻防になって、クライマックスではこれらが交互に描写される。映像の迫力もさることながら、骨子はやはり夢/記憶/現実の交錯というアイディアであり、ひいては序盤の伏線までも回収するという、見事な展開だ。
10年前はスルーしていたパンフレットを、今回は購入。制作における裏話は、興味深いものばかりだった。撮影は6ヵ国で行われ、東京はヘリコプターの飛行空域と高度に厳しい規制がある中でされたこと。ホテルの廊下を回転させる巨大セットは、ロンドンの飛行機格納庫で組まれたこと(ノーランが常時利用しているところのようだ)。雪山の撮影は、カナダのカルガリーで行われたこと、などだ。
日本人向けのパンフレットということもあろうが、サイトーを演じた渡辺謙に関する記述も豊富だ。ノーランは君のための役を用意したとオファーし、渡辺謙は勿論快諾。製作のエマ・トーマス(ノーランの公私に渡るパートナー)は『バットマン・ビギンズ』のときは出番が少なかったので、今回は全面的に活躍できるようにしたとのこと。また、スタントを用意したが、全てのアクションを自らこなしたそうだ。
『インセプション』の作品内容だけでなく、ノーラン本人にもかなりスポットを当てている。この時点での手掛けた作品、自身の趣向や製作における姿勢、好きな映画監督(スタンリー・キューブリック)、好きな007作品(『女王陛下の007』)などを、キーワードで紹介している。この人についての考察の文章もあって、的を得ているなと思ったのは、本作が『ダークナイト』の次の作品であり、同様の路線に走ることなく別のアイディアを提示し、それが冒険的であるにも関わらず素晴らしい仕上がりになったことへの賛辞だ。同感だ。
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