ブレードランナー2 レプリカントの墓標
2020年8月ロサンゼルス。レイチェルを伴い北の山奥に逃れた、元ブレードランナーのリック・デッカード。レプリカントのレイチェルには死期が迫っていて、冷凍睡眠によりかろうじて生きている状態だった。タイレル社の追手が2人を追い詰めるが、その指揮をしていたのはサラ・タイレル。タイレル博士の姪で、レイチェルのテンプラント(オリジナル)だった。レイチェルと容姿も声も同じサラは、デッカードに宇宙から逃亡した「6人目のレプリカント」の解任を半ば強引に引き受けさせる。
かつてのデッカードの上司ブライアントは、何者かに殺されていた。一方で、リオン・コワルスキーに殺されたと思われていたデイヴ・ホールデンは、病院でかろうじて生きていた。ホールデンを延命させるために拉致し、人工心臓を与えたのは、寿命が尽きて死んだはずのロイ・バッティ。この男も、「6人目のレプリカント」の解任を請け負っていた。
映画『ブレードランナー』の約1年後を描いた続編の小説で、邦訳は1996年に出版された。作者はK・W・ジーターという人で、フィリップ・k・ディックとも交流のある人だとか。
2017年に正統な続編の『ブレードランナー2049』が公開された今となっては、この小説のストーリーや設定は、よく言って大胆、はっきり言えば『とんでもない』。熱心なファンにとっても、拒否反応が起こって不思議ではない。
死んだように思われていたホールデンや、映画では死んだと言われていたものの死体が描かれなかったセバスチャンが生きていて登場する。また、今回登場するバッティはテンプラントつまり人間、そしてレイチェルのテンプラントであるサラの登場、この辺りまではまだいい。
しかし、映画で死んだプリスが実は人間で、今回レプリカントが登場することや、レプリカントをフォークト・カンプフ検査にパスさせる処方を施すヤミ科学者のイシドアというキャラクターなどは、ちょっとやりすぎかなと思う。人間とレプリカントとの境界を一層あいまいにすることが狙いだろうが、読んでいて混乱する。クライマックスでデッカードとバッティは再び相まみえるのだが、そこでのデッカードの台詞にて、状況がようやく整理された感じだ。
『6人目のレプリカント』がキーになっているのは、1982年公開版では、地球に逃亡してきたレプリカントの数が6人いたと思わせる描写があったからだ。これは、実は制作側のミスによって劇中で矛盾が生じてしまったためで、2007年公開の『ファイナル・カット』では訂正されている。当時、人数が合わないことは6人目はデッカードなのでは?という憶測も出ていて、リドリー・スコットはその説を面白がり、ハリソン・フォードは否定。そんな出来事も、今では懐かしい。
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