インターポール(Interpol)@マイナビBlitz赤坂 2018年11月6日
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最終更新日:2023/06/11
Interpol サマソニ, ジョイ・ディヴィジョン, ヴェルヴェッツ
サマソニ2007以来実に11年ぶりの来日公演は、東京1回きりという限定的な公演に。しかし、11年待っただけのことはある、会心のライヴだった。ファーストアルバム『Turn on the Bright Lights』を全曲再現することが事前にアナウンスされていて、黒と赤で彩られたステージは、アルバムのジャケットを思い起こさせた。
19時30分開演という社会人に優しい設定時刻を、10分ほど過ぎたところで客電が落ちた。向かって左の袖からメンバーが登場し、『Untitled』〜『Obstacle 1』を畳み掛ける。現在のバンドは3名。中央にギター&ヴォーカルのポール・バンクス、向かって左がギターのダニエル・ケスラー、後方左がドラムのサム・フォガリーノ。右前方には長身のベーシスト、後方にはキーボーディストが陣取っていて、この2人はサポートだ。
ポールの低音ヴォーカルは、よく言われているがジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスを彷彿とさせる。増してや今回のポールはGIカットのような短めめの髪形で、(あくまで遠目に見た限りだが)容姿までイアンに接近している。ほぼ直立不動で歌うが、全曲でギターを弾いていた。ダニエルはメンバー中最も躍動感があり、動きがマニックスのニッキーにどことなく似ていた。
サウンドは2本のギターの絡み合いが軸になり、まるでテレヴィジョンのトム・ヴァーレインとリチャード・ロイド/ジミー・リップの絡みを彷彿とさせる。ポールとダニエルのギタープレイを観ているだけでも飽きることがなく、むしろワクワクしてしまう。そしてドラムのサムが、この2人に負けるまいと応戦しているようにも見える。3人がステージを牽引しサポートの2人はバックアップに回るという、あまりにもはっきりした図式でパフォーマンスが行われているように思えた。
ステージには、計10本の縦棒状の電飾、いくつかのサーチライト、そしてミラーボールが後方に2基とステージ上方に1基あって、サウンドやバンドのプレイにシンクロして稼動する。メロディーが静から動に転じる瞬間の閃光など効果的すぎて、うわあやられたと思ってしまう。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド〜テレヴィジョンの系譜に連なると思える立ち位置は、個人的にどストライクだ。興味深かったのは、ポールもダニエルもギターを交換せず、共に1本のギターで全曲を弾いていることだ。それなのに、特にダニエルは多彩なリフを発していて、それがポールの低音ヴォイスを一層映えさせているのだとわかった。なんてカッコいいバンドなんだろう。
曲順もそのままに『Turn on the Bright Lights』を再現。スローな『NYC』からアッパーな『PDA』『Say Hello to the Angels』と、まるで全曲演奏されることが前提で作られたような曲たちだ。これがキャリアを重ねた上で生み出されたのではなくデビューアルバムなのだから、なんという完成度の高さだろう。
個人的には2003年、2005年、2007年と彼らのサマソニ出演は逃さず観ていて、そのいずれでもこれらの曲は歌い演奏されたはずだ。しかし、リリースから15年以上を数えベーシストの脱退などさまざまな紆余曲折を経た今の彼らの演奏力には、説得力が格段に増している。熱の入りようは、途切れるどころか終盤に向けて更に加速し、そのまま『Leif Erikson』まで突っ切ってしまった。
数分のインターバルを経て、ベストヒットを集約したアンコールに。『Not Even Jail』で幕を開け、新譜『Marauder』からは『The Rover』『If You Really Love Nothing』『Number 10』などを披露。そう、本来なら今年は彼らにとっては『Marauder』の年であるはずだ。
バンドがファーストアルバムを全曲演奏することに説得力が備わっているのは、単なる企画でも奇をてらったのでもなく、彼らの歩みと刻んできた実績に意味があったからだ。彼らのアルバムはどれも聴きごたえがあって、かつてクラフトワークがそうしたように、日替わりで全てのアルバムを全曲演奏してもいいくらいだ。特にセカンド『Antics』は全曲再現にふさわしいアルバムで、ココでもラストは『Slow Hands』『Evil』の2連発だった。
セットリスト
アルバム『Turn on the Bright Lights』全曲再現
Untitled
Obstacle 1
NYC
PDA
Say Hello to the Angels
Hands Away
Obstacle 2
Stella Was a Diver and She Was Always Down
Roland
The New
Leif Erikson
アンコール
Not Even Jail
All the Rage Back Home
The Rover
If You Really Love Nothing
Lights
Number 10
NYSMAW
Slow Hands
Evil
『Turn on the Bright Lights』がリリースされたのは2002年で、バンドは昨年リリース15周年に掛けて全曲再現ツアーを行っていた。つまり今回のセットは、彼らの活動サイクル的に本来ならば観られるはずのないセットだったのだ。そしてアンコールを含め計20曲の演奏は、近年の彼らのライヴでは最大レベルの曲数だ。彼らがここまでやってくれたことを嬉しく思うと共に、次の来日までは11年も待たせないでほしい(笑)。
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