プロフェッツ・オブ・レイジ(Prophets Of Rage)@Warped Tour
公開日:
:
最終更新日:2021/04/12
The Vans Warped Tour 2018 フジロック
ワープトツアーが発表され、プロフェッツ・オブ・レイジのエントリーが決まったとき、観ないという選択肢はなかったが、期待と同じくらいの不安があった。スーパーグループとは、えてして曲が持つ魔力にバンドの方が支配され、懐メロに陥りがちだからだ。
ライヴは、最高だった。
定刻になり、ステージのバックドロップを覆っていた幕が落ちてアルバムのジャケットを模したアートがお目見え。そして登場した6人だが、ステージ前方に横一列に並び立ち、拳を上に突き出していた。この光景だけで、鳥肌が立った。6人とも羽織袴姿だったのにもびっくりした。
サイレンのSEから、バンド名と同名の『Prophets Of Rage』で、ライヴは始まった。バンドにとっての名詞的な位置づけと思われ、オープニングにはうってつけだ。後方中央にドラムセットがあり、ブラッド・ウィルクが陣取っている。その向かって右には、パブリック・エナミーのDJロード。前列は、向かって左にティム・コマーフォード、中央にチャックDとサイプレス・ヒルのB-リアル、そして右端にトム・モレロだ。
そして、早くも『Testify』『Take The Power Back』という、レイジナンバーときた。チャックDとB-リアルのツインリードは、予想をはるかに上回って強力。その2人に、トム・モレロが絡む。トムの指さばきと腕さばきはまるで魔法のようで、スクリーンにクローズアップされると見ていて一層テンションがあがる。ギターを抱え込むように持ち、左手でネックを、右手でアームを操るその姿は、まぎれもなくトムだ。ギターの背面には、なぜか「そだねー」という貼り紙を貼っていた(後半では『FUCK TRUMP』になっていた)。
ティムは全身を躍動させながらベースを弾き(羽織袴はこの人がいちばん似合っていた)、ブラッドはリズムキープとどでかいビートを、当たり前のようにこなしていた(ラスト・インターナショナルのライヴも、この人のドラムで見たかった)。
サウンドとしてバンドを支えているのは、ブラッドとトムに思えた。トムは何度もブラッドのところに歩み寄り、この2人のコンビネーションが演奏のスタートの軸受けになっているように見えた。そして、パフォーマーとしてもトムはバンドを牽引していた。何度となくオーディエンスを煽り、この人こんなに激しい人だったっけ?と思ってしまった。
中盤、レイジのメンバーが捌けてチャックD、B-リアル、DJロードの3人に。すると、なんとヴォーカルの2人がステージを降りてモッシュピットに突入。新人や若手ならまだしも、大御所の部類に入るこの2人が、ここまでやるとは。
2人がステージに戻るのを見計らったようにレイジの3人もスタンバイし、『Sleep Now In The Fire』へ。この後は、先ほどとは逆にレイジの3人だけになった。トムがMCでクリス・コーネルについて触れ、そして3人のインストでオーディオスレイヴの『Like A Stone』を演奏。しかしステージは暗めで、前方中央のマイクスタンドにのみピンスポットが当てられた。でも、クリス追悼をこんなふうにやるなんて、カッコよすぎるよトム。
終盤も、レイジとプロフェッツの曲が織り交ぜられて進行。さすがに発汗が多くなってきたのか、トムとブラッドは着替えていたし、ティムは上半身裸になっていた(後にブラッドも)。B-リアルは、ターバンにサングラス姿のままで突き進んでいた。そして、トムの長いイントロリフを経て、『Bulls On Parade』だ!場内はこのライヴで何度目かの沸点を迎える中、ラストはやはり『Killing In The Name』。恐らくは空耳アワーの影響もあり(笑)、場内は大合唱になった。
プロフェッツ・オブ・レイジは、レイジ解散以降最もレイジ的なアプローチで活動しているバンドだと思う。レイジが偉大すぎたゆえに、3人は軽々しくレイジの曲を演奏することを自主規制し続けてきたのではないか。それが、チャックDやB-リアルといった、ベクトルを同じくする先輩と融合することで、足枷を解くことに成功したのだろう。お互いにリスペクトし合っているのが、ステージから伝わってきた。
個人的に、2008年のレイジ再結成来日はともかく、2度のフジロックと2000年の幕張メッセ公演は、当たり前に行われるライヴとして足を運んだ。そのとき当たり前の公演と思っていたのが、何年か経って特別な公演になってしまっていることに、改めて気づかされた。2003年のオーディオスレイヴ来日も、クリスの死によって、レイジとは違う意味合いで特別な公演になってしまった。今夜のプロフェッツ・オブ・レイジも、もしかすると数年後には特別なライヴになっているかもしれない。
2日間に渡って行われたワープトツアーも、これで終了。参加された皆さん、お疲れさまでした。
関連記事
-
ムック(MUCC)@Warped Tour
ドラム、ベース、ギター、ヴォーカルという、オーソドックスな編成。音はかなりヘヴィーでラウド、
-
トータルファット(TOTALFAT)@Warped Tour
キャリア20年近くのベテランとのことだが、音楽がまさにストレートな青春パンクで、ティーンエイ
-
ディジー・サンフィスト(Dizzy Sunfist)@Warped Tour
大阪出身の女の子スリーピースバンド。いちおうギターのコがリードヴォーカルだが、ほか2人もコー
-
ザ・ラスト・インターナショナル(The Last Internationale)@Warped Tour
昨日、そして今日のディジー・サンフィストまで、ステージの後方でライヴを観ていた。気づくと、次
-
オブ・マイス&メン(Of Mice & Men)@Warped Tour
この後観るコーンとリンプを別格と考えれば、この日観たアーティストの中で最も収穫だったと感じて