ユリイカ2005年10月号 特集=攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX
2005年に出版されたムックで、ワタシは2012年に入手し、読んでいた。
タイトルの通りで、士郎正宗の原作にも、押井守が手掛けた2本の映画『Ghost In The Shell』『イノセンス』にもほとんど触れられず、神山健治が監督した全52話の『STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)』に焦点が当てられている。
押井守の攻殻ありきでスタートした中、神山はS.A.C.をその「親戚」と位置付けた。声優陣はほとんど変わらないが、映画とは似ているようで異なり独自性があるという、微妙にして独特のポジションを築くことに成功している。神山は押井直系の弟子で、初期は押井のコピーだったと自ら認めている。もちろん、後にそれを脱したのだ。
S.A.C.全52話は、1話完結を基本にしつつ、根幹となる大きな事件「笑い男事件」「個別の11人」があって、この構成はテレビドラマの刑事ものをサンプルにしたとか。そしてこの本の中では、2nd GIGのキーマンでもあるクゼとゴーダに対する評価がすこぶる高い。素子とバトーとクゼを三角関係としているのは、精神的にはそうかなとも思うけれど、そこまで生々しくもないだろう。
S.A.C.は、押井版ではフォローしきれなかった士郎正宗の原作についても、それとなくピックアップしているのが素晴らしい。原作のフチコマは押井版では未登場だが、S.A.C.になってタチコマとして日の目を見る。1st GIGで素子が義体を交換する際にアオイと遭遇し交わす会話は、原作で人形使いと融合するときの会話とダブる。
それでいて、社会的なテーマを盛り込み、文学的なネタもちょいちょい入れてくる。「笑い男事件」は、「ライ麦畑でつかまえて」をベースにしている。「個別の11人」では、本来三島由紀夫を導入したかったとのことだが、権利関係がひっかかってやむなく架空の作家にしたそうだ。『ユリイカ』はこの辺りの考察に強く、作品の裏側を垣間見ることのできる絶好のツールになっている。
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