月に囚われた男(2010年)
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最終更新日:2022/03/16
ダンカン・ジョーンズ ディストピア, デヴィッド・ボウイ
エネルギー源を採掘する仕事で月にひとりで赴任している男、サム。ひとりきりで、話し相手は月面基地内のロボットのみ。電波の都合上地球との直接交信はできず、地球にいる妻と小さな娘とは、録画テープによるやりとりをしている。3年の任期は、まもなく終わろうとしていた。しかしサムは月面車で事故を起こしてしまい、気がつくと基地の診療台に。そして、すぐ近くにはサムと瓜二つの男がいた。
実はサムはクローンで、サムとしての記憶はコピーされたものだった。任期を終えても地球に帰ってはおらず、また次のクローンが3年の任期を果たす。地球との交信ができないのは企業が妨害電波を発していたからで、それに気づいたサムは妨害電波の届かないところにまで行き、地球の自宅にテレビ電話を。妻は数年前に亡くなっていて、娘は成長していた。そして瓜二つの男は、本来なら入れ違いに任務を果たすはずだった次のクローン。2人ははじめはいがみあっていたがやがて秘密と自分たちの身の上に気付き、月からの脱出を試みる。
テレビ電話で通話する妻や娘、会社の役員などはいるものの、実質的にはサムを演じるサム・ロックウェルのひとり芝居だ。ロボットの声は、ケビン・スペイシーが演じている。監督はダンカン・ゾウイ・ヘイウッド・ジョーンズ。映画監督としては新人だが、父親はあのデヴィッド・ボウイである。原題がシンプルに『Moon』となっているのに、邦題を『月に囚われた男』としたのには、日本の映画関係者のセンスを感じる。父ボウイは、『地球に落ちて来た男』という映画に異星人役で主演している。
月、基地という、ほとんど密室と言っていい空間を舞台にした、非常に地味な作品である。しかし、過去のSF名作映画へのオマージュと思わせる要素がいくつかある。基地内における人間とロボットとの対話は『2001年宇宙の旅』を思わせるし(ただしロボットのスタンスがまるで異なっているが)、クローンでありながら人間らしく振舞わんとしているのは、『ブレードランナー』に通ずるものを感じる。この映画、原作があるのかと思ったら、ダンカン・ジョーンズのオリジナルのようだ。
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