セッション(ネタバレあり)
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最終更新日:2021/03/27
デミアン・チャゼル
19歳のジャズドラマー、ニーマンは、アメリカ最高峰と言われる音楽学校に入学。教師フレッチャーは、ニーマンを初等科クラスからスタジオバンドに呼び寄せる。しかし、完全主義者のフレッチャーはわずかなテンポのズレを聴き逃さず、椅子を投げつけ、罵声と平手打ちをニーマンに浴びせる。
ニーマンはガールフレンドとも別れ、自分の時間すべてをドラムの練習に捧げる。フレッチャーの理不尽な仕打ちに耐え、スタジオバンド正ドラマーの座を勝ち取る。しかしコンペティション当日、事故が原因でまともにドラムを叩けなくなっていた。
ニーマンは退学になるが、フレッチャーも行きすぎた指導が問題になって辞職していた。その後、2人は再会。フレッチャーは、来るジャズフェスティバルに指揮者としてバンドを率いることを話し、ニーマンをバンドに誘う。
J・K・シモンズ演じるフレッチャーの狂気と紙一重な鬼教師ぶりがすさまじく、これでアカデミー助演男優賞を受賞している。怒鳴り散らし、差別用語を連発し、『フルメタル・ジャケット』の教官を思い起こさせる。そのフレッチャーに対して引くことなく迎え撃ったニーマンを演じたマイルズ・テラー(『ダイバージェント』)にも、シモンズに劣らない称賛があっていいのになあと思った。
コンペでドラムが叩けなかったのは、もとはと言えば乗ったバスがパンクし遅刻しそうになったからで、それでもレンタカーを自ら運転し、追突され横転し、血まみれになりながらもステージに立つことをあきらめない。そして、これら一連の言い訳も全くしない。ここまですさまじい執念を、今どきの若者に見いだすのは難しい。
2人が再会したとき、フレッチャーはチャーリー・パーカーが如何にしてバードと呼ばれるまでになったかというエピソードをニーマンに聞かせ、生ぬるく褒めて才能をつぶすことこそが悲劇だと言う。ニーマンも、そんなフレッチャーを理解しようとしていた。
それだけに、フェスのステージでのフレッチャーのニーマンに対する仕打ちが、どうしても解せない。ニーマンの密告により自分がやめさせられたと決めつけ(弁護士がニーマンに告発を促す場面は確かにあったが、実際に告発した描写はなく、言わばグレー)、ニーマンには伝えていなかった曲を演奏し始める。楽譜のないニーマンは、当然ながらバンドの足を引っ張ることに。これは才能を育てるための指導ではなく、卑劣で陰湿ないじめだ。
この後ニーマンは逆襲に転じて自ら演奏をはじめ、はじめは戸惑っていたフレッチャーとのバトルになる。このシーンがやたらと絶賛されていて、映画史に残るとか言われている。しかしワタシは上記のことがひっかかり、そう感じることはできなかった。
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